田中雄二の「映画の王様」

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『アリゾナ無宿』『逆襲の地平線』(逢坂剛)

2017-02-22 13:09:44 | ブックレビュー

 再版なった逢坂剛氏の西部小説『アリゾナ無宿』と続編の『逆襲の地平線』を一気に読了。

 

 この2冊は、南北戦争後の米西部を舞台に、17歳の少女ジェニファが、賞金稼ぎ=バウンティハンターのトム・ストーンと正体不明の日本人の通称サグワロと知り合い、共に賞金稼ぎの旅をするという、西部劇ファンにとっては何ともごきげんなロードノベル。『逆襲の地平線』ではもう一人、血気盛んな若いガンマンのジャスティ・キッドが仲間に加わる。

 旅を続ける中で、疑似家族のようになっていく彼らの動静が、ジェニファの目で語られるのが好ましい。これは、同じく少女を主人公にした『トゥルー・グリット』(『勇気ある追跡』)にならったものだろうか。

 コマンチ族にさらわれた少女を取り戻すという『逆襲の地平線』は、ジョン・フォードの『捜索者』をほうふつとさせるなど、過去の西部劇で描かれたエッセンスがふんだんに盛り込まれているので、読みながら元ネタを考えるのも楽しみの一つ。

 また、旅程、風景、地理、気候、料理などのディテールが詳細に書き込まれているのが素晴らしい。日本人がよくぞここまで調べて書いたものだと感心させられた。

 日本では昔から西部小説は受けないとされ、書き手は極端に少ないのだが、その意味では、西部劇の魅力がちりばめられたこの2冊は貴重な存在だといえる。

 先日、前日談にあたる『果てしなき追跡』が刊行され、サグワロの正体が土方歳三だと明かされたが、できればこの2冊の続きの方を読みたかった。そして、この手は手塚治虫も『シュマリ』で使っていた。

コメント
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