田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ブリグズビー・ベア』

2018-06-20 06:32:14 | 新作映画を見てみた
つくづく不思議な映画



 幼い頃に誘拐され、外部から遮断されたシェルターの中で、にせの両親が作ったにせの教育番組「ブリグズビー・ベア」を見ながら育った25歳の青年ジェームズ(カイル・ムーニー)。

 と、出だしは『ルーム』(15)『10クローバーフィールド・レーン』(16)のような、監禁ものを思わせるのだが、実は、中心となるのは、シェルターから解放されたジェームズが、「ブリグズビー・ベア」の続きとして一本の映画を作るまでの話なのだ。まあ、にせの父親をマーク・ハミルが演じている時点で、すでにジョークのにおいがぷんぷんするわな(本来、ハミルがやりそうな役をグレッグ・キニアがやっている)。

 で、その正体は、アメリカで人気のコメディユニット「グッドネイバー」が中心になって作った、チープなSFパロディ満載のコメディ映画。ところが、これが不思議な魅力があったのだ。

 ジェームズにほだされて、本当の両親、妹、友、そして刑事までもが映画作りに協力する姿を見ながら、レンタルビデオ店の店員(ジャック・ブラック)が、ハリウッド映画をホームビデオで勝手にリメークしてしまう様子を描いたミッシェル・ゴンドリー監督の『僕らのミライへ逆回転』(08)を思い出した。どちらも、映画作りの純粋な動機や楽しさを、改めて知らしめるところがあるからだ。

 そして、最後にジェームズの身に起こる一種の“奇跡”を見ながら、何とフランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(46)のことが思い浮かんできた。まさか、妙な着ぐるみのクマを見ながら、こんな思いを抱くなんて…。つくづく不思議な映画であった。 
コメント
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