『人生劇場』(83)
青成瓢吉(永島敏行)は故郷を離れ、東京の早稲田大学で学生生活を送っていた。学生運動に熱中した瓢吉は、お袖(松坂慶子)と出会い愛し合うようになるが、やがて別れる。
その後、作家を目指す瓢吉は、ある日、同じく作家志望の照代(森下愛子)と出会う。小説の懸賞で一席と二席を分け合った2人は、同棲生活を始める。そして2人のヨーロッパへの取材旅行が決まり、出向いた出版社のパーティで瓢吉と別れて女郎になったお袖と再会。お袖はすっかり変わり果てていた。
尾崎士郎の同名小説、13回目の映画化。深作欣二が「愛慾篇」、佐藤純彌が「青春篇」、中島貞夫が「残侠篇」をそれぞれ担当して一本にまとめた珍しいタイプの映画。尾崎の遺族が侠客を中心として描いたそれまでの映画に難色を示したこともあり、この映画は青成瓢吉を中心としたものになっている。
松坂、森下、中井貴恵の濡れ場のほか、吉良常に若山富三郎、飛車角に松方弘樹、宮川に風間杜夫、青成瓢太郎に三船敏郎というキャストも話題を呼んだ。大正時代の話ながら、瓢吉役の永島をはじめとするキャストや撮り方などに、作られた80年代初頭の映画界を取り巻く雰囲気が色濃く出ているのが面白い。永島は、松坂とは『事件』(78)、森下とは『サード』(78)でも共演している。