硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「スロー・バラード」

2020-09-21 19:47:12 | 日記
                      

「そういやぁさ。また、突然なんやけどさ」
「ん? 」
「夏の夜で思い出したんやけど、ようじさぁ、祇園さんの肝試しって、おぼえとる? 」
「ああっ。たしか、川向こうのお墓まで行って帰ってくるやつじゃなかったっけ」
「そうそう、毎年、4年生以上が参加できるってルールでさ。」
「俺、一回、行ったかな。夜道歩くだけだけど、面白かったような気がする」
「あれっ。ようじ、しらんだっけ? 」
「えっ。なにを? 」
「そうかぁ。知らんかぁ。まぁ知らん方がええのかもしれんけどな」
「そんなこと言われたら、気になる。で、なにがあったの? 」
「実はな・・・・・・」

 毎年恒例の肝試しは、線香花火の燃えカスでくじ作って、二人で、川向こうのお墓の前のお地蔵さんに手を合わせて帰ってくるっていう、簡単なものやった。けど、田舎やで、街灯あらへんし、しかも、川沿いの道やったから真っ暗でふつうに怖かった。
単2電池2本の懐中電灯だけがたよりで、行って、帰ってくるだけなんやけど、戻ってきたペアに、「どうやった! 」と聞いて、「怖かったわ! 」とか、冗談で「火の玉見たわ」とか「墓石が光ったわ」とか言って、次の組の人をビビらせて、面白がってた。

けど、6年生の時の肝試しを境に、やらんくなったきっかけは、それまで、祇園さんに来たことがなかった同級生のあきよちゃんが来ていた事やった。

 あきよちゃんは少し変わった子で、女子の間の噂では、小さい時から、俺らには見えやんものが見えるらしいて言われていた。けど、それはあくまでもうわさで、ホンマかどうかは分からんから、もし、あきよちゃんが『ほんまもん』なら、「木曜スペシャル」の、霊とかの特集でやってたことが本当に起こるんと違うやろかと思て、俺は、ひそかに「あきよちゃん肝試しに参加せんかなぁ」と思てた。