硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「スロー・バラード」

2020-09-25 17:47:54 | 日記
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それがどういう訳か、たまたま久美ちゃんの友達がバスの窓を見てて、次の日、「ふざけやんといて!」って、すごい怒られた。それを境に、久美ちゃんとも気まずくなって、なんとなく話もせんようになってしもた。ほんまに、ほろ苦い青春の思い出や。

「久美ちゃんの友達から、えらい怒られたで。ほんま、おちこんだわ」
「悪かったな。マジだったもんな」
「ほんまやでぇ。俺、ずっと引きずっとるもん」
「あれ、今だから言うけど、あと一押ししたら付き合えてたかも」
「えっ、どういうこと? 」
「久美ちゃん。お前の事、気にしてたよ。これ、久美ちゃんの部活の友達情報」
「なにっ! まじで!! 早よ、言えよ~」
「残念やったな。お前だけ彼女出来るのってあかんと思った」
「お前~。最悪やな~」
「まぁ、もう済んだ事だから諦めろ」
「いやいや。まだ、4年前の出来事やん。チャンスあるんちゃう? 」
「それはないな。なぜなら久美ちゃん。来年結婚するぞ。情報は、町の噂を握っている隣のおばちゃんからだから間違いない」
「あほ~。もうええわ~」
「まぁまぁ、そう落ち込むな。東京で彼女が出来たら、彼女の友達紹介するから待ってろ」
「そんな遠いとこまで、遊びに行けるか! 」

 俺らは、また大笑いした。けど、中学はなかなか大変やった。小さい田舎の町の、小さい時から知っている人しか知らんかった俺らにとって、4つの小学校の生徒が一斉に集まった中学では、人が多すぎて、なかなか、なじめやんだ。
それでも、海沿いの団地に住んでいる子らは、凄く進んどったから、俺らも続けとばかりに、急に、たばこ吸ったり、お酒飲んだり、シンナー吸うたり、香水付けたり、エナメルの細いバンドに入ウエストの太いズボンはいたり、エロ本回し読みしたりした。それは、今までになかった遊びやったから、刺激があって本当に面白かった。