今の子どもたちは、クリスマスクリスマスと騒いで幼稚園などでもイベントを組むから、思い出が沢山あるのだろうが、残念ながら私たちの世代では、クリスマスの思い出と云っても、ほんの少ししかない。
小学校へ上がるころだったか新しがり屋の父が子どもたちのためにプレゼントを用意したらしい。生憎25日の朝には仕事で父母は留守、目が覚めたら、枕元に鉛筆が2~3本靴下に入っていた。苦肉の策で祖母がしたことらしい。仕事から帰った父が画板を取り出してこれがクリスマスプレゼントと渡してくれた。このときはじめてサンタと云うのは嘘で父母のことなのだと悟った。一生の中で思い出に残っているのはこのことだけである。
それに引き替え正月と云うのは、沢山の思い出がある。先ず大掃除、あちらでもこちらでも大掃除をし、玄関の入口には、橙の付いたしめ飾り、暮れには親戚が集まり一日がかりで鏡餅と正月に戴く四角の餅造り、勉強机の上にも小さな鏡餅が載っていた。
お正月の朝は客用の座布団に座り特別の割り箸で雑煮を頂く。雑煮は餅と正月菜のみで、削り節を掛けたり黒糖を掛けたりして食べた。
その日は午前中、学校で式典があり出校しなければならなかった。学校への道中も新しい年が始まる気配が感じられ空気までがリンと冴えていたような気がする。
数日間このような日が続き徐々に普通の日がやってきて学校も始まる。今では味わえない尊い日々であった。(E)