「令和」の「令」の字は、つくりの一部が「ア」なのか「マ」なのか。
菅官房長官が掲げた字は「ア」にだったが、「マ」と習った人も多いはず。
調べたところ、差は書体(フォント)の違いでどちらでもよいのが結論。
というところまでは書いた。
先の記事では文科省によれば、と書いたが、正式には
文部科学省の外局である文化庁の文化審議会、国語分科会の見解である。
さて、この話が話題になってからメディアで専門家の意見が多く取り上げられていたが、
その中で気になったものを2つ。
一つは言語学者である金田一秀穂さんのご意見。
「ア」「マ」以外の第3の形として「叩」のつくりではないか、との説。
アと似ているが、縦棒の出だし位置が異なる。
そこで、「叩」のつくりを当てはめると書体的にはどうなるかやってみた。
うーん、どうもしっくりこない。
もともと「令」の中の一部ではなく、「叩」から引っ張ってきているので、
縦横比をいじってはいるものの、なじまないのもしょうがないのかもしれない。
もう一つは「ア」または「マ」と部首である「ひとやね」の間の部分。
「一」なのか「、」なのか
これも書体により異なるが、大体「ア」系は「一」、「マ」系は「、」になっているようだ。
ただし、「マ」系でも「一」のものもある。
細かいところを見ると、「ア」系、つまり「一」ではほとんど差が見られないものの、
「マ」系の大半、つまり「、」では「マ」とくっついているのかいないのかの差がある。
もともとTVでは「ア」が明朝(明朝にもいろいろな書体があるが総じて同じ)で、
「マ」が教科書体だと言っていた。
そのほかに、代表的な書体(フォント)としてはゴシック体、行書体、楷書体などがある。
ゴシック体は、「跳ね」「抜き」がなく画の終わりが「止め」で表されるが、
「アマ」「一、」については明朝体と同じ形。
行書体は書体(フォント)によって、つまりは文字フォントを作った人の筆遣いによって
大きく違うし、そもそも続け字になっているので横に置いといて、楷書体で比較してみる。
白洲楷書体と由紀葉は手持ちに「太」でないフォントがなかったので太楷書体とした。
白洲太楷書体は「マ」なのに「一」になっているし、
由紀葉太楷書体と白洲ペン楷書体は楷書体でありながら「ア」となっている。
教科書体でもデジタル教科書体は「マ」で「、」だが、ゴシック調になっている。
結局フォントで大きく違うということ。
この分で行けば「止め」「跳ね」「抜き」なんか大して意味がないのかもしれない。
翻って国語分科会漢字小委員会の資料を読むと常用漢字表は慣用的な書き方を否定するものではなく
横棒の長い短い、例えば、「無」の横棒3本のうちどれが一番長いか、とか
前述の「一」「、」、たとえば「戸」の上は「一」か「、」か、とか
くっついているか離れているか、たとえば「保」の「木」の部分が「木」か(「十」+「ハ」)か、
抜きか止めか、たとえば「公」の「ハ」の右は「止め」か「抜き」か、
止めか跳ねか、たとえば「木」の縦棒、「改」の「己」の書き終わりは止めか跳ねか
これらはすべて「どちらでもよい」となっている。
さらに「女」の第3画の「ノ」は横棒を突き抜けるか突き抜けないかすらどちらでもよいとあるし、
「年」の横棒の2本目と3本目の間の縦棒は、閉じていてもいいし開いていてもいいし、点でもいいし
横線でもいい、とある。
(ただし、例えば「土」と「士」など長さの違いが字の違いになるものもある)
小学校で「止め」「抜き」「跳ね」を厳格に指導すると聞いたことがあるが
(いまだにそうなのかどうかは知らないが)、文科省から見れば「変な話」ということになる。
なお、資料は漢字小委員会H27/9/25付の資料4を参考にしており、同資料には、先例として
S24の内閣告示1号、S55の内閣告示1号で同様の解説があったとされている。
さらに、文部科学大臣政務官通知「常用漢字表の改訂に伴う中学校学習指導要領の一部改正当
及び小学校,中学校,高等学校における漢字の指導について(通知 (平成22年11月30日)」
と、
「小学校学習指導要領解説国語編(平成20年6月 文部科学省)」を引用し、
実際の学習現場での指導が教科書やドリル等に示された漢字と細部にわたって一致しているかどうかで
正誤を決めている例があるが、よろしくないとしている。
文科省がはっきりと「抜け」「止め」「跳ね」には大して意味がないと言っているということ。
文科省が字体の細かいところまで指導しろと言っているのかと誤解していたが、事実は逆だった。
尚、個人の苗字など固有名詞については常用漢字表の適用外であり、字体の違いを
広く容認するものではないことは付け加えておく。
菅官房長官が掲げた字は「ア」にだったが、「マ」と習った人も多いはず。
調べたところ、差は書体(フォント)の違いでどちらでもよいのが結論。
というところまでは書いた。
先の記事では文科省によれば、と書いたが、正式には
文部科学省の外局である文化庁の文化審議会、国語分科会の見解である。
さて、この話が話題になってからメディアで専門家の意見が多く取り上げられていたが、
その中で気になったものを2つ。
一つは言語学者である金田一秀穂さんのご意見。
「ア」「マ」以外の第3の形として「叩」のつくりではないか、との説。
アと似ているが、縦棒の出だし位置が異なる。
そこで、「叩」のつくりを当てはめると書体的にはどうなるかやってみた。
うーん、どうもしっくりこない。
もともと「令」の中の一部ではなく、「叩」から引っ張ってきているので、
縦横比をいじってはいるものの、なじまないのもしょうがないのかもしれない。
もう一つは「ア」または「マ」と部首である「ひとやね」の間の部分。
「一」なのか「、」なのか
これも書体により異なるが、大体「ア」系は「一」、「マ」系は「、」になっているようだ。
ただし、「マ」系でも「一」のものもある。
細かいところを見ると、「ア」系、つまり「一」ではほとんど差が見られないものの、
「マ」系の大半、つまり「、」では「マ」とくっついているのかいないのかの差がある。
もともとTVでは「ア」が明朝(明朝にもいろいろな書体があるが総じて同じ)で、
「マ」が教科書体だと言っていた。
そのほかに、代表的な書体(フォント)としてはゴシック体、行書体、楷書体などがある。
ゴシック体は、「跳ね」「抜き」がなく画の終わりが「止め」で表されるが、
「アマ」「一、」については明朝体と同じ形。
行書体は書体(フォント)によって、つまりは文字フォントを作った人の筆遣いによって
大きく違うし、そもそも続け字になっているので横に置いといて、楷書体で比較してみる。
白洲楷書体と由紀葉は手持ちに「太」でないフォントがなかったので太楷書体とした。
白洲太楷書体は「マ」なのに「一」になっているし、
由紀葉太楷書体と白洲ペン楷書体は楷書体でありながら「ア」となっている。
教科書体でもデジタル教科書体は「マ」で「、」だが、ゴシック調になっている。
結局フォントで大きく違うということ。
この分で行けば「止め」「跳ね」「抜き」なんか大して意味がないのかもしれない。
翻って国語分科会漢字小委員会の資料を読むと常用漢字表は慣用的な書き方を否定するものではなく
横棒の長い短い、例えば、「無」の横棒3本のうちどれが一番長いか、とか
前述の「一」「、」、たとえば「戸」の上は「一」か「、」か、とか
くっついているか離れているか、たとえば「保」の「木」の部分が「木」か(「十」+「ハ」)か、
抜きか止めか、たとえば「公」の「ハ」の右は「止め」か「抜き」か、
止めか跳ねか、たとえば「木」の縦棒、「改」の「己」の書き終わりは止めか跳ねか
これらはすべて「どちらでもよい」となっている。
さらに「女」の第3画の「ノ」は横棒を突き抜けるか突き抜けないかすらどちらでもよいとあるし、
「年」の横棒の2本目と3本目の間の縦棒は、閉じていてもいいし開いていてもいいし、点でもいいし
横線でもいい、とある。
(ただし、例えば「土」と「士」など長さの違いが字の違いになるものもある)
小学校で「止め」「抜き」「跳ね」を厳格に指導すると聞いたことがあるが
(いまだにそうなのかどうかは知らないが)、文科省から見れば「変な話」ということになる。
なお、資料は漢字小委員会H27/9/25付の資料4を参考にしており、同資料には、先例として
S24の内閣告示1号、S55の内閣告示1号で同様の解説があったとされている。
さらに、文部科学大臣政務官通知「常用漢字表の改訂に伴う中学校学習指導要領の一部改正当
及び小学校,中学校,高等学校における漢字の指導について(通知 (平成22年11月30日)」
と、
「小学校学習指導要領解説国語編(平成20年6月 文部科学省)」を引用し、
実際の学習現場での指導が教科書やドリル等に示された漢字と細部にわたって一致しているかどうかで
正誤を決めている例があるが、よろしくないとしている。
文科省がはっきりと「抜け」「止め」「跳ね」には大して意味がないと言っているということ。
文科省が字体の細かいところまで指導しろと言っているのかと誤解していたが、事実は逆だった。
尚、個人の苗字など固有名詞については常用漢字表の適用外であり、字体の違いを
広く容認するものではないことは付け加えておく。
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