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試写会「麦子さんと」@一ツ橋ホール

2013-12-03 00:34:09 | 映画感想
2013/11/29、一ツ橋ホール。

一ツ橋ホールはあまりお勧めできる試写会場ではないのだが、
前方に陣取ればまずまず。

最前列の2列は可動席で、前5列は傾斜がない。
スクリーンが若干上にあって、そうそう前列がかぶることはないが、
気になる方は6列目から後ろ。

ただし、縦長の会場の最後尾から見る画面はかなり小さく、
後方は大画面が嫌いでできるだけコンパクトに見たい方以外は避けた方がいい。



堀北真希、松田龍平、余貴美子、温水洋平、麻生祐未



麦子(堀北真希)は、3年前に父が他界、兄、憲男(松田龍平)と二人暮らし。
今はアニメ/漫画専門店でバイトしながら声優学校に入るのが夢だ。

そんな二人の下を離婚した母、彩子(余貴美子)が訪ねてきた。
もう何年も音信不通だったのに、突然同居したいとの話を持ちかけてきた。

結局は反発する麦子を余所に憲男は同居を承諾する。

父が死んでから母が毎月憲男に仕送りをしてくれていたことを麦子は知らなかった。
憲男は経済的な面からも母の申し出を断れないと言う。

麦子は生活環境も年代も違う母とは何かとトラブルを起こしてしまう。
そうこうするうち、憲男は彼女と同棲すると言ってアパートを出てしまう。

麦子と母の二人暮らしもトラブル続きだが、徐々に麦子は母を受け入れ始める。
そんなある日、突然母は死んでしまう。末期がんだった。

淡々と葬儀をこなす兄妹。

母を毛嫌いして強がりを見せていた兄は骨上げの後、声を上げて泣き崩れていた。
49日が近付き、仕事を外せない兄に替わり、
麦子は一人で母の故郷に納骨に行くことになった。



そして、母の故郷。

何人かに誰かに似ていると驚かれながら、予約していた八幡浜旅館に着く。
旅館の主人、春男(ガダルカナル・タカ)、夏枝(ふせえり)は
タクシー運転手のまなぶ(温水洋平)と同じように驚く。

麦子が若いころの彩子に瓜二つだと言うのだ。
彩子の面影を麦子に見た同級生たちが集まり旅館は大宴会となる。

翌日、墓園を訪れた麦子は埋葬許可証を忘れたことに気づく。
図らずも麦子はその町にとどまることになり、母の過去に触れることになった。



「親の心、子知らず」と言うことわざがありますが、それを具現化した映画でした。
世代によって感じ方が違うと思う。

この親子ほどではなくても、自分と親との関係を映画の中に写し鏡としてみた場合に、
共感を持つのか、反発を持つのか、あるいは単に変わった(興味ある)話としてとらえるのか、
監督は自分の人生観、感覚を提示してはいるが、それがどう受け取られるのかはかなり微妙。

ちなみのうちのかみさんには大不評でした。

子供にとって親は選べない。

だとすれば子供を慈しみ育てるのは親の責務でもあり本能でもある。

いろいろ事情があるにせよ、親に捨てられた(と思った)子供の心の傷を
癒すのは何なんだろう。
子供が本当の親の姿、親がすごしてきた子供時代や青春時代を知ることが
その手助けになるのだろうか。



母に対する反発をもっているが、母の人となりを知り許す、
あるいは愛おしく思うようになる。

それをどうやって表わすか。
納骨をチャッチャッと済ませてしまえば母を知る時間は取れない。
反発はあるが、母の過去を知る人たちとの接触の時間をどうやって長く取るか。
そのために「埋葬許可証を無くした」ことにし、再発行することで時間を稼ぎ出した。

別に納骨はいつでもできるので、一旦帰ってしまってもいいところだが、
とどまらざるを得ない必然性の設定には無理がない。



チラシの写真は堀北真希に見えない。
余貴美子との類似性を強調するために、
わざと余貴美子似のものを使ったのかもしれないが、
あまり効果的とは思えない。

各人の年齢設定などに無理があるようには見えなかったが、
堀北真希はかなり若く見えた。



「埋葬許可証」ってあったっけ、と気になった。
母の死で納骨時に持っていったのは「火葬許可証」だったはずだ、と思ったからだ。
調べたところ、「火葬許可証」に火葬したことが証印されたものが
「埋葬許可証」となるそうだ。

死亡届(あるいは死体検案書)->火葬許可証=>埋葬許可証となる。



(以下、うろ覚えなので正確ではありません)

仏教では死後あの世(極楽浄土)へ行くまでに7日ごとに審判を受ける。
生前の罪が重くても遺族によって法要が行われれば、赦しを乞うことができる。

そのために、7日毎に法要を行うがその最初のものが「初七日」の法要である。

審判は7回繰り返され、7回目、つまり七七日=四十九日(7日×7回=49日)で、
死者はやっと赦されてあの世に向かうことができる。

この49日間を中陰と言い、七七日=四十九日を満中陰と言う。

骨はこの後、墓に埋葬=納骨されるが、必ずしも七七日ピッタリに納骨する必要はないし、
最近では散骨や遺骨を(粉末にした後)加工して記念のものを作ることもあるようだ。



使者が死んですぐに天国なり極楽なり、場合によっては地獄なりに行かず、
現世と来世の狭間にいると言う考えは東洋独特のものではないようだ。

「ラブリー・ボーン」では死んだ娘(シアーシャ・ローナン)がこの狭間におり、
暫くの間、嘆き悲しむ父(マーク・ウォールバーグ)に会いに行ったりして悶々とする。

「ヒアアフター」ではマリー(セシル・ド・フランス)は臨死体験でこの狭間に落ちるし、
死んだ双子の兄も暫くこの狭間にいて弟とコンタクトした後、あの世に行ってしまう。

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2 コメント

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Unknown (クマネズミ)
2014-01-15 21:36:27
今晩は。
おっしゃるように、「本当の親の姿、親がすごしてきた子供時代や青春時代を知ること」によって、「親に捨てられた(と思った)子供」は自分の心の傷を癒せるのだろうか、という点は本作に対する大きな疑問符だと思います。本来的には、自分ら兄妹を置いたまま彩子が飛び出していかざるを得なかった経緯をきちんと知ることの方に意味があるのかもしれません。でも、本作では、そちらの方(父親のDVでしょうか)は憲男の簡単な言葉だけにとどめ、専ら母親の青春時代に焦点を当てていますが、そうなるのも、本作では、わずか3年前になくなった父親の存在がほとんど無視されているためではないでしょうか。
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クマネズミさんへ (KGR)
2014-01-16 09:50:15
いつもコメントありがとうございます。
クマネズミさんのブログ記事では映画評論家の意見が併記され、さらにそれに対するコメントもあり、興味深く読ませていただいています。
さて、母の本当の苦労が実は上京後の挫折や結婚、出産、離婚にあったことは想像に難くありませんが、
もとよりこの映画のテーマではなく、もっぱら麦子の知らなかった母の地元での様子に限定するため、
父との関係に触れなくていいよう、父は3年前(時期としては微妙ですが)に死んだことにしたと言っていいのではないかと思います。
ただ、それでも彩子の実家、両親や親戚に触れられていないのは不思議です。
クマネズミさんが言及されていますが、墓の疑問もあります。
結局のところ、テーマ先行で背景についての掘り下げ不足なのではないでしょうか。
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