田園酔狂曲

二人三脚の想い出と共に!!

救世主

2019-09-12 15:43:17 | 田園ものがたり
栄通り時代のヒゲは、朝からあわただしかった。
特製カップにコーヒーを用意したら、直ぐに車で我が家を出発です。
モーニングコーヒーをゆっくり頂いて、という優雅な言葉とは無縁の世界。
時間が貴重だから、信号待ちの時間を使って、コーヒーを飲みます。
その頃は、手伝いの叔母ちゃんを相棒に、ヒゲの独り仕事でしたから、
時間を有効に使うしかなかったのです。

目的地は、天草の生け簀屋。
やがて、三角半島にたどり着く頃には、海が見えてきます。
しかし、これからが長いのです。
そうして、やっと生け簀屋に着きますが、お目当ての小平目は見当たりません。
すると、水槽の片隅に、何か見えます。
  
まるまる太った真ゴチです!
  「 この鯒は、幾らネ? 」  「 ウン、300円たい 」
ヒゲは、計算します。
当時の熊本市内の活けの養殖タイが、グラム300円でした。
1キロ弱みたいなコチだから、2.700円ぐらいか? まあ、そんなもんだろう。
「 じゃあ、この鯒を五本と、あのニシ貝を五個ちょうだい 」
そして、支払う時でした。  妙に安い?
伝票を見ると、真ゴチ一本が300円!?
グラムの値段と思っていたのが、何と一匹の価格だったのです。
        
         《 ババゴチ(笑)と呼ばれる、こういう格下コチもいました 》

ヒゲは小躍りしながら、セリカLB1600GTで帰路に着きます。
           
         《 これのグレイで、京都時代に手に入れた車です 》

少し疲れが出たヒゲは、気分転換に8トラのカセットを差し込みます。
“ニューミュージック”というタイトルのハチトラから、新人歌手の曲が流れてきます。

   ♫ そんな~時代も~ 🎶  あーたねと ♫ きっと笑える 日が~来るワ
     ♫ 今日は 倒れた旅人たちも 生まれ変わってぇ~ 🎶 歩~き出~すヨ~


これが新人か? ずいぶん練れてる唄だなー!
           
                《 実物ではないハチトラです 》

まるで、人生の達人みたいな曲だ。
想像に及ばなかった苦境に立つヒゲ夫婦の現状を、励ましているように聞こえた。

そうこうしている内に、やっと熊本市の店に着きます。
元気にしているコチを水槽に移して、ホッとひと息。
ヒゲは、まだこの時、気づいていません。
この鯒たちが、田園の店の救世主に成ることを。
                    

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コメント (2)
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