蟹図鐔 高山
蟹図鐔 高山
背景の真鍮地を腐らかしにして、独特の地模様を浮かび上がらせている。酸による腐らかしを用いると、下地である真鍮に含まれている合金の素材の叢などが影響して意図せぬ景色が生ずる。微塵に、均質に素材が錬り合せられていれば地模様など出ないのかもしれないが、この地模様が面白い。ここでは磯に打ち付ける荒波、その砕けた泡を意図しているのだろう。波濤図、立浪図など、古典から既に波の表現方法があるも、それらを用いず、一部に流れを鋤彫で表すだけで、実体としてとどまることのない波を表現しているのだ。偶然の所産は芸術ではないという方もおられようが、破墨に似て、この技法を活かした作品は金工だけのものとして、興味深く鑑賞したいものだ。
蟹図鐔 高山
背景の真鍮地を腐らかしにして、独特の地模様を浮かび上がらせている。酸による腐らかしを用いると、下地である真鍮に含まれている合金の素材の叢などが影響して意図せぬ景色が生ずる。微塵に、均質に素材が錬り合せられていれば地模様など出ないのかもしれないが、この地模様が面白い。ここでは磯に打ち付ける荒波、その砕けた泡を意図しているのだろう。波濤図、立浪図など、古典から既に波の表現方法があるも、それらを用いず、一部に流れを鋤彫で表すだけで、実体としてとどまることのない波を表現しているのだ。偶然の所産は芸術ではないという方もおられようが、破墨に似て、この技法を活かした作品は金工だけのものとして、興味深く鑑賞したいものだ。