設問1.
設問2.
設問3. 日本の対中国政策として注目できるものに、環境政策がある。本文と下記の資料(ii)を用いて、その意義と限界について200字以内でまとめなさい。
資料
(ii)中国の大気汚染の多くは、石炭の使用に起因している。暖房、調理や産業用である。中国は膨大な石炭資源を有しているが、大半は質が悪く、大量の硫黄分を含んでいる。それを生焚きする結果、特に冬季には至る所に炭塵が広がる。1991年に中国全土で排出された排ガスは11兆立方メートル、煤煙は1600万トンだった。この煤煙の量は、3年間で全中国人の総体重とほぼ匹敵するほどになる。石炭に含まれる硫黄は酸性雨の原因になり、国境を越えてシベリアや朝鮮半島の森林を破壊する。専門家によると、中国は2010年までに、世界最大の酸性雨の発生源になる見通しという。
石炭燃焼から発生する二酸化炭素の排出は脱硫装置によって抑制できるが、日本の石炭火力発電プラントでは、プラントコストの約四分の一を脱硫、脱硝、集塵をあわせた環境装置が占めていたように、途上国で容易に負担できるコストではないと考えられている。日本で環境装置が普及したのは、経済成長初期~中期の頃なので、当時の日本でもそのコストは産業界にとっても大きな負担であった。しかし公害を防止できない工場や発電所の立地を許可しなかった地方行政の力は、民主主義が機能した賜物であったし、戦後の民主主義が成功したことの一つの成果であったとも言える。
中国国内に10万k㎡以上も存在している不毛のアルカリ土壌とりわけナトリウム集積土壌に、石膏を散布して農地を改良できる。そしてその石膏は、石炭燃焼ボイラーに脱硫装置を設置すると、副産物として大量に排出されるのである。つまり、脱硫装置が土地改良資材の製造装置になるのである。日本がこうした歴史的な背景の下に、石炭燃焼から発生する二酸化炭素を、脱硫装置の普及と脱硫副産物の有効利用によって、その排出量削減の手立てを提供し、砂漠の緑化ひいては食料増産に役立たせる技術を中国に協力して具体化していくことができるとしたら、21世紀人類生存の問題への一つの挑戦になると思われる。しかしながら、特定地域的な公害は、住民の目が届いていても硫黄酸化物や、地球温暖化の元凶の二酸化炭素の排出など広域汚染となると、分かりにくい。そこで、情報公開、自由な報道、国民の声が行政に反映されるシステム等が必要と考えられている。どこまでそれができるか。中国の環境問題の行方は、中国そのものの行方でもある。
(『未来史閲覧』産経新聞社、1996. 等を参考に作成)
解答例
工業化が進んでいる中国では、エネルギー消費量が増え、汚染物質の排出量も増加している。ところで日本は、公害問題を環境装置や省エネの技術の進歩で克服した。この優れた技術を中国に移転すれば、世界の環境保護に大いに役立つ。ただ、社会主義体制下で、情報も公開されず、国民の声が政治に反映されない中国が、厳しい環境基準を設定して生産活動を規制できるか、また規制に伴うコスト上昇を許容できるかが課題となる。
設問2.
設問3. 日本の対中国政策として注目できるものに、環境政策がある。本文と下記の資料(ii)を用いて、その意義と限界について200字以内でまとめなさい。
資料
(ii)中国の大気汚染の多くは、石炭の使用に起因している。暖房、調理や産業用である。中国は膨大な石炭資源を有しているが、大半は質が悪く、大量の硫黄分を含んでいる。それを生焚きする結果、特に冬季には至る所に炭塵が広がる。1991年に中国全土で排出された排ガスは11兆立方メートル、煤煙は1600万トンだった。この煤煙の量は、3年間で全中国人の総体重とほぼ匹敵するほどになる。石炭に含まれる硫黄は酸性雨の原因になり、国境を越えてシベリアや朝鮮半島の森林を破壊する。専門家によると、中国は2010年までに、世界最大の酸性雨の発生源になる見通しという。
石炭燃焼から発生する二酸化炭素の排出は脱硫装置によって抑制できるが、日本の石炭火力発電プラントでは、プラントコストの約四分の一を脱硫、脱硝、集塵をあわせた環境装置が占めていたように、途上国で容易に負担できるコストではないと考えられている。日本で環境装置が普及したのは、経済成長初期~中期の頃なので、当時の日本でもそのコストは産業界にとっても大きな負担であった。しかし公害を防止できない工場や発電所の立地を許可しなかった地方行政の力は、民主主義が機能した賜物であったし、戦後の民主主義が成功したことの一つの成果であったとも言える。
中国国内に10万k㎡以上も存在している不毛のアルカリ土壌とりわけナトリウム集積土壌に、石膏を散布して農地を改良できる。そしてその石膏は、石炭燃焼ボイラーに脱硫装置を設置すると、副産物として大量に排出されるのである。つまり、脱硫装置が土地改良資材の製造装置になるのである。日本がこうした歴史的な背景の下に、石炭燃焼から発生する二酸化炭素を、脱硫装置の普及と脱硫副産物の有効利用によって、その排出量削減の手立てを提供し、砂漠の緑化ひいては食料増産に役立たせる技術を中国に協力して具体化していくことができるとしたら、21世紀人類生存の問題への一つの挑戦になると思われる。しかしながら、特定地域的な公害は、住民の目が届いていても硫黄酸化物や、地球温暖化の元凶の二酸化炭素の排出など広域汚染となると、分かりにくい。そこで、情報公開、自由な報道、国民の声が行政に反映されるシステム等が必要と考えられている。どこまでそれができるか。中国の環境問題の行方は、中国そのものの行方でもある。
(『未来史閲覧』産経新聞社、1996. 等を参考に作成)
解答例
工業化が進んでいる中国では、エネルギー消費量が増え、汚染物質の排出量も増加している。ところで日本は、公害問題を環境装置や省エネの技術の進歩で克服した。この優れた技術を中国に移転すれば、世界の環境保護に大いに役立つ。ただ、社会主義体制下で、情報も公開されず、国民の声が政治に反映されない中国が、厳しい環境基準を設定して生産活動を規制できるか、また規制に伴うコスト上昇を許容できるかが課題となる。