コロナ禍の歌
・駅近く路上生活の人あふれコロナ禍の街に吹く風寒し
コロナ禍の歌を詠んだことはなかった。今回の現代歌人協会の歌集に収録するのに初めて詠んだ。なぜ詠まなかったか、いや詠めなかったのだ。余りにも切迫している。身辺もあわただしい。
「星座α」の尾崎主筆が言う、「あなた方、地震の激しい揺れの中で箪笥を押さえながら歌が詠める?詠めないでしょう?」という言葉が耳に残っていたからだ。コロナは地震ではない。当然だが、今激震の最中だ。感染の第4波が来ている。オリンピックの開催により、数万の選手・関係者が日本に押し寄せ人流が活発化して感染爆発を警告する、感染症の専門家・臨床医もいる。
だがここは思い切って詠んだ。原因がある。
新宿駅の東口と西口をつなぐ路上に、ホームレスがあふれていた。2020年の歳末だ。ざっと200人はいたろうか?それが僕の心を揺さぶった。「なんということだ」半ば怒りである。それが心に強く刻み込まれているときに原稿募集の案内が届いた。咄嗟にこの一首が浮かんだ。
新型コロナは20世紀21世紀の中で最悪の感染症だと、感染症の研究者で臨床医でもある岩田健太郎医師が言う。いまでも激震の最中だ。
おそらくコロナ禍の歌はそうは詠めないだろう。最初で最後の「コロナ禍の歌」になるかも知れない。
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