「天童大人プロデュース:詩人の聲」1291回 岩田亨の聲(23回目)
「(語り)こんばんわ。岩田亨です。今回は第四歌集集録予定の作品のうち、歌集の主題にかかわるもの、実験作、最後に確認をしたいもの、これを読み、初心を忘れないために、第一歌集『夜の林檎』から抄出した作品群を読んで行きたいと思います。先ず新作を読みます。」
「運河385号」より
・防波堤をこえる波あり釣り人の姿の見えぬ風つよき日に
・鎮めかねし怒りあれども沈黙を守りて時を送らんわれは(他4首)
「星座74号」より
・乾きたる更地に寒き風が吹く開発途上の街の一隅
・こだわりを振りほどき得ぬ顔をして話居るべし受話器の向こう(他六首)
「議事堂周辺:七首詠」
・群衆の声々ひびくビル街の列を離れてにぎり飯食う
(「うた新聞」に発表したものに国会議事堂包囲のものを加えたもの)
「ISによる人質殺害事件の追悼集会で詠んだ作品七首」
・人質の殺されしこと聞きてのち心凍れりわが生日は
(「星座α10号」に発表。)
「火祭り」「靴紐」十四首詠
・海外への派兵の結締なされたる今日多喜二忌の案内届く
(「短歌」誌上で試みた社会詠の実験作)
「マタギの爺」八首詠
・障子戸に自在鉤の影うつり居り猟師の小屋の囲炉裏近くに
(「星座」に発表し物語詩の実験)
「島の娘」八首詠
・未発表作品。短歌形式で「星座」に発表したものに手をいれ、八首で定形詩としたもの
「聲の力」七首詠
・未発表作品。作品批評会に出して吟味したものを集めた。歌集のタイトルの所以となるだろう。
「祈り」七首詠
・未発表作品。「短歌に肉親の死の虚構を入れてよいか」の論争に応えて、母の死の虚構を入れた。
「夕焼け」「白蛇伝説」「執着」など約100首。
・「運河」に発表したものを中心に、何度も聲に載せ改作し、練り上げて行ったもの。思い切って削除した作品も多い。
「ナルシス」約100首
・ナルシスの末裔という水仙を活ける器にガラスを選ぶ
・一人居の部屋に帰りてあてどなく夜の林檎を音たてて食む
(第一歌集『夜の林檎』の作品だが、聲に出すことによって、三分の二は捨てた。だがこの日聲に出し、さらに捨てるものがみつかった。
【今回の公演で第四歌集の収録作品がほぼ形になった。次回は最終原稿のつもりで、全編を読んでみたい。来場の方より「素晴らしい」ライブだったと言われた。だが聲の出し方にはまだ課題が多い。】
次回は9月9日。ギャルリー東京ユニマテにて18:30開場、19:00開演。予約問い合わせ、090-3696-7098 北十字舎(天童)