岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「角川短歌」7月号:新作『薔薇の白きは』

2012年06月27日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「角川短歌」7月号の特集は、「小さな発見を歌う」だったが、それとは別に短歌の新作7首を発表した。原稿依頼を受け取ってから色々と考えた。

 叙景歌にするか、心理詠にするか、社会詠にするか。考えに考えぬいた末の結論は「福島」という地名を入れず「フクシマ」を詠むことだった。

 やはり福島第一原子力発電所の原子力災害からは頭が離れない。南関東でも深刻な問題である。放射線の線量が高い所がままある。食の安全の視点からも、あらゆる角度から、そのままにはしておけない問題でもある。

 だが、福島県外という難しさがある。どうしても他人事(ひとごと)になってしまうのだ。それには「抒情詩への昇華」が必要だ、と僕は考えている。短歌の目指すものは、事実の伝達ではなく作者の持つ情感を読者に伝えられるように、的確に表現するものだからだ。先ず7首を紹介する。

・神々の意思告ぐるごと咲く花の赤きは悲し堪え難きまで・

・現代の神話つぎつぎと崩れゆく向日葵の花はかく輝けど・

・もう今は想定外といえまいとかの男らも話し居るべし・

・人間が声を大きく上げて居りかつて抗い得ざりし事に・

・価値観の変わりしことを受けとめて移りゆけるを時代と言うや・

・顧みることつらかりし人々のうちの一人かこのわれもまた・

・砂のごとき一日(ひとひ)過ごしし夜の夢に厳かに咲く薔薇の白きは・

 事実は勿論、情感も的確に表現され読者の心の中に印象を鮮明に結ぶ様にしなければならない。そこに難しさがあるのだが、それには工夫がいる。そのいくつかの工夫をこの7首から、感じて頂ければ幸いである。

 地名がはいっていないにもかかわらず読めばそれとわかる言葉をいくつか入れた。また「ものに心を託す」という「写生・写実」を基本を踏まえつつ、花の色を象徴的に使った。「赤」と「白」との二つがそれである。

 科学の無限なる進歩を考えて疑わなかったことも視野に入れた。「科学技術と人間と」の関係性も暗示させたのも工夫の一つだ。

 これが僕の考える社会詠だが、出来は如何だろうか。





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