岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

短歌の道しるべ(1)

2012年10月28日 23時59分59秒 | 作歌日誌
「短歌の道しるべ(1)」

:今月のワンポイント:(4月)『かながわ文化センターなどでの配布資料』

*定型に慣れる*

 「サラダ記念日」が爆発的に売れたとき、作者の俵万智氏は詩人の谷川俊太郎氏(鉄腕アトムの主題歌を作詞した詩人)にこう言われたそうです。

 「あなたたち(歌人)は私達(詩人)の敵です。」

実際はユーモラスな言い方だったのでしょうが、活字にするとかなり厳しい感じがします。戦後の現代詩は定型の否定を含んでいましたから、当然と言えば当然。しかし、さすが俵万智氏。その言葉を聞いて考えこんだりしませんでした。

 「それならば5・7・5・7・7のリズムを味方にしてやれ。」

と思ったそうです。言葉のリズム感は詩の大きな要素ですから、5・7・5・7・7のリズムを最大の武器として使おうということですね。

 短歌の形式がなぜ5・7・5・7・7なのかについては、さまざまな説があります。しかし、内容はともかく、1000年以上続いているのは事実ですから、形式自体に詩としての大きな長所があるのでしょう。

 それでは、この5句31音という定型を自由に使えるようになるには、どうしたらよいでしょうか。多くの歌人が共通して言っているのは、

 「たくさん読んで、たくさん作る」

ということです。たくさん作るには、まずたくさん読むことが必要でしょう。万葉集・百人一首・好きな歌人の歌集といろいろありますが、私は佐藤佐太郎をおすすめしています。佐藤佐太郎は斎藤茂吉の弟子で、私の師匠筋にあたります。だから勧めているという訳でもないのですが、「岩波現代短歌事典」の中での引用歌が最も多いこと、5句31音の定型にこだわっていることなどがその理由です。みなさんも何か一つ選んで、くりかえし声に出して読んでみてはいかがでしょうか。

      『佐藤佐太郎歌集』(岩波文庫)

*近代の名歌(1)*

:幾山川越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日も旅ゆく   若山牧水

:白鳥は哀し(かなし)からずや空の青海のあをにも染まずただよふ  若山牧水

:君かへす朝の舗道(しきみち)さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ 北原白秋

                             (続く)



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