「短歌の道しるべ(1)」
:今月のワンポイント:(4月)『かながわ文化センターなどでの配布資料』
*定型に慣れる*
「サラダ記念日」が爆発的に売れたとき、作者の俵万智氏は詩人の谷川俊太郎氏(鉄腕アトムの主題歌を作詞した詩人)にこう言われたそうです。
「あなたたち(歌人)は私達(詩人)の敵です。」
実際はユーモラスな言い方だったのでしょうが、活字にするとかなり厳しい感じがします。戦後の現代詩は定型の否定を含んでいましたから、当然と言えば当然。しかし、さすが俵万智氏。その言葉を聞いて考えこんだりしませんでした。
「それならば5・7・5・7・7のリズムを味方にしてやれ。」
と思ったそうです。言葉のリズム感は詩の大きな要素ですから、5・7・5・7・7のリズムを最大の武器として使おうということですね。
短歌の形式がなぜ5・7・5・7・7なのかについては、さまざまな説があります。しかし、内容はともかく、1000年以上続いているのは事実ですから、形式自体に詩としての大きな長所があるのでしょう。
それでは、この5句31音という定型を自由に使えるようになるには、どうしたらよいでしょうか。多くの歌人が共通して言っているのは、
「たくさん読んで、たくさん作る」
ということです。たくさん作るには、まずたくさん読むことが必要でしょう。万葉集・百人一首・好きな歌人の歌集といろいろありますが、私は佐藤佐太郎をおすすめしています。佐藤佐太郎は斎藤茂吉の弟子で、私の師匠筋にあたります。だから勧めているという訳でもないのですが、「岩波現代短歌事典」の中での引用歌が最も多いこと、5句31音の定型にこだわっていることなどがその理由です。みなさんも何か一つ選んで、くりかえし声に出して読んでみてはいかがでしょうか。
『佐藤佐太郎歌集』(岩波文庫)
*近代の名歌(1)*
:幾山川越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日も旅ゆく 若山牧水
:白鳥は哀し(かなし)からずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水
:君かへす朝の舗道(しきみち)さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ 北原白秋
(続く)
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