岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

2012年版「現代万葉集」出詠歌:3首

2012年10月27日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「2012年版 現代万葉集」    自然の部

 日本歌人クラブ編 NHK出版刊


1.草生なき広き砂地はゆうぐれて眩しきまでに泉が湧けり・

2.地を叩く雨の激しき夕暮にゆずらぬさまに向日葵が咲く・

3.やわらかく光放てる月のもと遠き木立の影が冷たし・


 一首目。日光の光徳沼の情景。かなり以前の記憶に基づいて作品化した。「写生はその場で詠まなければならないので不自由だ」という与謝野晶子の論難に対して、斎藤茂吉が、「何時詠んでも構わない。例え何年も経っていたとしても。」と反論したのは広く知られている。そう20年も前の情景だ。

 二首目。自宅近くの景。急な夕立の中に向日葵が立っていた。雨は激しいが、向日葵は凛と立っていた。「ゆずらぬさまに」というのは比喩だが、佐藤佐太郎の歌に「暮方にわが歩み来しかたはらに押し合ひざまに蓮しげりたり(歩道)」がある。「押し合ひざま」という表現が際立っているが、僕の一首はこれを踏まえている。

 三首目。月下の景である。月が輝けば木々の影はなおさら際立つ。そこを詠んだ。同じく佐藤佐太郎に「階くだり来る人ありてひとところ踊場にさす月に顕る(地表)」がある。いわば「光と影」をモチーフにした一首だ。

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150-8080

東京都渋谷区宇田川町41-1

 NHK出版 TEL 0570-000-321(販売)





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