岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

2012年の作品より: 5首抄出

2013年05月10日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
・天空に竜の形の雲のあり地に幾筋の光を降らし・

・エーテルの匂漂うような朝おもおもとして春の雪降る・

・白き石また白き石続きたる水無川に菊芋が咲く・

・雑炊に葉物野菜をとりまぜぬわが体内を浄めんまでに・

・夏至前後青草しげる廃屋の庭より猫の声が聞こえる・


 この5首は、多くは過去の記憶に基づくもの。以前見た光景、以前体験したこと。これらは余剰が排されて、感動の中心だけが心に残っている。そこがポイントなのだ。

 与謝野晶子が「写生はその場で詠まねばならないので不便だ」と言った時、斎藤茂吉は次の様に言った。


「その場で詠んでもいいし、何年も経ってから詠んでも一向に構わない。」

 何年も経つと、印象が凝縮されるようなところがあって、感動の『核』のみが残る。案外こうした詠み方が成功することが多い。

 つまりは「様々なものを見」「様々な体験をする」ことが重要なのだろう。

 一首目は2年ほど前。二首目は昨年の3月。三首目は10年ほど前。四首目は現在。そして五首目は30年ほど前の記憶にもとづいている。


 先輩の歌人がこういった。

「一流の絵を見て、優れた映画を見たり、いい音楽を聞く事が大事だ。」

 佐藤佐太郎の「純粋短歌」には「体験」の一章がある。つまりは「感性のアンテナ」を張り巡らせるのが重要なのだろう。






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