「星座50号記念号」巻頭佳詠8首
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・わが心日々拉げゆく思いにて朝刊夕刊ていねいに畳む
・誰かれを探すにあらず窓近き座席選んで日光を浴ぶ
・禍々しき事件の続く初なつに庭に咲きたるドクダミ摘まず
・常識的世界の及ばぬ無理数を拒めるわれを凡夫と呼ぶや
・死がそこにあらんほどまで闇深くことさら響くミミズクの声
・事務机に誰が置いたか紺色の賽を振りたり何するとなく
・空調の効きたる部屋にやすやすと絶滅危惧種の獣が眠る
(51号の「前号の北斗七星」でとりあげられた。)
・あら草は何を恃みに生い茂る日差まぶしき六月十日
尾崎左永子主筆の寸評は次のようなものだった。
「この処力量安定して次第に独自の歌境を作りつつある。或種の熱気を底に沈めつつ作品の重量感を増して来た。・・・」
とあった。「熱気を底に沈める」「重量感を増す」というのは本当に難しい。
俳優の滝沢修は、白いドーランを顔に塗る前に、顔を真っ黒に塗ったそうである。
「この方が表情の深さと陰影が出るんだ。観客からは見えないがね。」
と言っていたのを不意に思いだした。
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