僕の家の近くに、通称「石の公園」と呼ばれるものがある。里山・遊歩道・草はら・林・森・ログハウス・・・。これらがそなわった公園の入り口に石のオブジェが据えられている。大規模団地のほぼ真ん中に位置しているのだが、その団地そのものが緑の丘に囲まれている。標高が100メートルを超えているのが、小学校のなかにある標柱に刻まれている。
「何であんなにさむいの?」
バスで15分ほどの所に住む知人が言う。里山と市道の並木が桜の名所なのだが、桜の開花が市の中心部と比べて一週間は遅い。最寄りの駅から東京23区まで電車で30分とかからないのだが、信じられないほど自然が残っている。
夜になると「石の公園」には人気(ひとけ)がなく、水銀灯にオブジェが光る。住宅地に自然が残っているのではなく、切り拓いた丘陵地帯に人間が住まわせてもらっている、といった感覚におそわれる。
オブジェの石は、縦2メートル・横と高さ1メートルの直方体が4つばかり。そのうちひとつは直立している。その圧倒的量感のせいか、吹く風さえも重い心地がする。
独特の感性と批評されたが、当然のこと本人にとっては独特でも何でもない。「風が重い」と表現した初句・二句が独特といえば独特だが、佐太郎のいう「虚」で、これを効果的に使えた初めての作品である。