第1074回 詩人の聲 岩田亨公演 (7回目)
4月2日 於)ギャルリー東京ユニマテ(京橋)
「今回はよくいらっしゃいました。今日で、私の第三歌集の『剣の滴』を読み終わります。旧作を全部吐き出したことで、新しい地平線が見えて来たようです。
・朝露光る
すずやかに光る青葉の重なりを見つつおのれの未来を思う
・外来種
外来種の魚増えゆく湖に夕日の色はかくまで赤し
・モノクロ
幻影はなべてモノクロ現実のものと異なる形象もあり
・ウイスキーボトル
思い切り雪降り来るとの声聞いてウイスキーボトルを卓上に置く
・幼児期の記憶
その腕の刺青(しせい)を常に怖れ居き幼児期の記憶の中の断片
・偽りの季節
偽りの季節の中にあわれなりこの温室にラフレシア咲き
・竜舌蘭の花
わが心鎮めゆくまでいさぎよし竜舌蘭の花の白きは
・伏流水
吹き出ずる伏流水は滝となり風うごくとき虹があらわる
・恒河沙(こうかしゃ)
ガンジスの川砂の漢語を恒河沙と聞いて遥けし旅の記憶は
・カップの重量
手に持てる白きカップの重量を味わうように珈琲飲みぬ
・裏門坂
手狭なる古き神社と距離へだて裏門坂という地名あり
・秘話
秘話は秘話そのままにして捨て置かん偽ることもときに美し
・クレソン苦し
眠れざる夜を過ごして起きる朝おもいきり噛むクレソン苦し
・正当と異端
正当と異端の区別は何ならん二世紀まえのロシア史を読み」
第三歌集「剣の滴」はここまで。あとは新作30首詠一本と50首詠二本を読んだ。旧作はやはりあらが目立つ。特に結句が浮き上がっているもの、主題のはっきりしないもの、漢語が馴染んでいないものなど。聲に出すと読み難い。改めて「聲の力」を実感した。
新作30首詠。これは歌会で批評されたののを推敲し、「聲に載せる」ことで完成品となった。読んでいて聲が全く淀まない。新作50首詠の一本目も完成に近づいている。新作50首詠はまだまだ途上だ。
次回からは歌集に未収録のものを、読んで第四歌集の収録歌を決めていく。プロジェクト参加7回目にして、自分の作品がかなり違ってきたのを実感している。作品の批評も違ってきている。
プロデューサーの、天童大人からは、「10回公演までは必死で読むこと」「ゆっくり間をとって読むこと」などのアドバイスを受けた。