日本ペンクラブ声明「東京2020組織委員会は報道統制をしてはならない」
【またか!】
東京2020組織委員会がまた問題を起こしている。今度は週刊文春が開会式の内容を報じたことに対して、販売中止・回収・オンライン記事の削除を求め、さらに毎日新聞が非常識な高額日当を基準に会場運営費を算定しているのではないかと、と報じたことに抗議し謝罪・訂正を求めている。
国立競技場デザイン変更やエンブレム盗用問題から始まり、最近の前会長や辞任した開閉式演出責任者の差別発言まで、いったいどれだけ醜聞をまき散らすつもりなのか。マスメディアが、多額の税金を投入して開催される「国家的プロジェクト」の内情を取材・報道し、問題点を指摘するのは当たり前ではないか。
【マジか!】
週刊文春が報じたのは、本人も知らないうちに契約を打ち切られた演出家考案した開会式演出案だという。組織委員会がその記事の回収・削除を求めたということは、ほぼその通りに開会式が行われたと認めたに等しい。また毎日新聞の指摘ももっともである。
組織委員会の一連の要求は言論統制そのものであり、知る権利の侵害であることは言うまでもない。だが、そのこと以上に、新たなる演出案もつくれず、みずからの手の内を明かしていることにも気づかない要求をする組織委員会の体たらくにがっかりする、今からでも遅くない、組織委員会は両メディアへの要求を撤回すべきである。
【落ち着け!】
オリンピック報道は、現在の聖火リレーの段階から浮ついている。東京新聞記者が福島県内を大音響を上げて走る企業宣伝カーを撮影したネット動画は、国際オリンピック委員会(IOC)の「ルール」により72時間しか掲載できなかった。NMKが長野県内の聖火リレーをネット中継した映像はいきなり途中で無音になり、五輪反対を叫ぶ市民のたちの声が消去された。
IOCや組織委員会に、公道上も含めて五輪関係行事に報道規制をする権限があるのか、それは憲法で保障された言論や表現の自由に抵触しないのか。そうでなくてもコロナ禍の下、賛否両論ある五輪開催である。報道機関は多様な現実を伝えることが仕事ではないか。
東京五輪2020がうまく開催できたとして、終わってみたら、言論統制の居丈高と、商業主義の騒々しさと、マスメディアの空騒ぎの印象だけが残った、などということにならないよう、関係方面の冷静な奮起を期待する。
2021年4月6日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 吉岡忍