岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

報告:天童大人プロデュース「詩人の聲」参戦(34回目)

2016年07月05日 07時18分46秒 | 岩田亨の作品紹介
天童大人プロデュース「詩人の聲」 34回目公演

                       6月16日 於)ブックカフェ21世紀


 ブックカフェ21世紀は神田の古書店の2階にある。本を読みながら軽食が食べられる。また様々なパフォーマンスが開かれる。プロジェクト「詩人の聲」の参加詩人は詩集を刊行するとここで刊行記念の公演を行う。


 ここで第四歌集『聲の力』を一時間肉声で聲に出した。収録歌400首のうち約300首を読んだ。


 「聲の力」7首詠

・詩人らが一時間余り撃つ聲を聞くときわれは目をつむりたり

 このプロジェクトを通じてこの歌集は出来上がった。歌集の主題に関わる連作である。

 「祈り」7首詠

・しみじみと/わが原罪を浄化する/太陽の風 月よりの波

 短歌に肉親の死を読み込んでよいかという論争があった。FBで加藤治郎と大辻隆弘が論争している。加藤は出来ない、現代短歌にその必然性はないという。大辻は表現はもっと自由であっていいと言う。ここで僕が割ってはいった。「象徴詩の技法を使えば作品ができる」。加藤治郎が言った。「岩田さん。言うはやさし。行うは難しですよ。」できるものならやってみろと僕はとって、この連作を作った。象徴詩だから、当然写実とは違う。佐藤佐太郎の歌論に学ぶといいながら「虚構を入れるとは何事だ」という場違いな批評をもらったが反論するのも馬鹿馬鹿しい。


 「島の娘(こ)」8首詠

・島の娘(こ)は/とつとつと言う/その島は打ち寄せる波に日々削られると

 これは元々は独立した短歌8首だった。8首で一篇の定型詩となるように表現をかえた。「新しい試みだ」「現代詩から見ると違和感がある」評価は半々だ。


 「マタギの爺」8首詠

 ・障子戸に自在鉤の影移り居り猟師の小屋の囲炉裏近くに

 猟師が自分の獲物を囲炉裏にかざして酒と一緒に出す店があった。掘っ建て小屋の店だった。独特の風貌があり、印象深い。

 「ハチ公前広場」7首詠

 ・弔いの言葉の一つ言わぬ者をあるを耳にし悲しみの湧く

 2015年2月1日。ISによって日本人質が殺害された。これが僕の55回目の誕生日だった。忘れられない出来事となった。以来、2月1日には追悼集会に出るようにしている。偶然とは言え、一生忘れられないだろう。

 「議事堂周辺」7首詠

・ゼッケンの紐結びつつ永田町一番出口を急ぎ出たり

 安保法反対の座り込みに参加したときの作品。東京新聞が2015年安保というほどなのにこれはほとんど作品化されていない。70年安保はあれほど詠まれたのに。右傾化は歌壇のなかにもあるのだろうか。プロレタリア文学の系譜を引く歌人から絶賛された。

 「火祭り」8首詠

・戦場のありよう伝える記事読みて笊蕎麦すするを途中で止めぬ

 社会詠の実験作を収録した。約500首の社会詠を作って残ったのは40首たらず。少しづつ歌集に収録していたが今回で収録し終わった。また詠んでみたいと思う。


 「われの肖像」10首詠

・争論の終わりし部屋のすみに居てミルフィーユの味をわれは楽しむ

 『運河』の巻頭詠だった作品。助詞を添削された作品があったが元へ戻した。


 あとは時間の続く限り作品を読んだ。この公演で一区切り。しばらく「詩人の聲」への参加は休むことにした。だが聲を出す場は神奈川で積極的に作っていく積りだ。アマチュアバンドのボーカルになってマラカスを振っている。これも聲の修練の一つだ。

 なおこの歌集、角川書店から全国販売されることとなった。全国の書店で注文可能。






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