・充つるなき日終わらんとして自らを虐ぐるごと辛子溶きをり
「彩紅帖」所収。
自己凝視強い作品だ。こういう作品を「自虐の歌」と評する人がいるが、それは違う。自己凝視は自己を深く見つめること。見つめることで独自性が自覚できるのだ。
「辛子を溶く」が効いている。忸怩たる思いを噛みしめている印象が満ちている。粉の辛子だろうが、洋辛子、和風辛子はどちらでも良い。辛子のパンチのある香りが重要なのだ。「唐辛子炒る」よりパンチが効いている。言葉を慎重に選択したのだろう。
「自己凝視の強さ」「その日に何があったかの捨象」これは佐太郎譲りだが、パンチの効き方が、尾崎左永子の独自性だ。