岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

自分を虐げ辛子を溶く歌:尾崎左永子の短歌

2022年08月29日 17時40分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・充つるなき日終わらんとして自らを虐ぐるごと辛子溶きをり

 「彩紅帖」所収。

 自己凝視強い作品だ。こういう作品を「自虐の歌」と評する人がいるが、それは違う。自己凝視は自己を深く見つめること。見つめることで独自性が自覚できるのだ。

 「辛子を溶く」が効いている。忸怩たる思いを噛みしめている印象が満ちている。粉の辛子だろうが、洋辛子、和風辛子はどちらでも良い。辛子のパンチのある香りが重要なのだ。「唐辛子炒る」よりパンチが効いている。言葉を慎重に選択したのだろう。

 「自己凝視の強さ」「その日に何があったかの捨象」これは佐太郎譲りだが、パンチの効き方が、尾崎左永子の独自性だ。






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