「夜の林檎」所収。
横浜・川崎の臨海部には運河が多い。月々の歌会の会場の近くにも運河がある。上には高架式高速道路があって、昼でも暗い。だが、横から差し込む日光が反射して黒い水が底光りする。
この作品は「運河」誌の「作品批評」にとりあげられたもので、そうした運河を詠んだものである。「水おごそかに」が一首の核心で、その水が「満ちみちている」ところが何やら暗示的だった。
その運河は高速道路の高架下にあるので、朝昼夕によりほとんど表情を変えない。一日中くろくそして暗いままである。そこに架かる橋をわたって歌会の会場にいくのだが、遅刻しないように1時間前には会場にいくようにしている。
当然間をもて余し、運河・高速道路・ビル街など都市景観を見て時間をつぶす。高速道路の高架橋やビル街は喧騒に包まれているが、運河は常に重々しい水をたたえている。流れているのかいないのかわからないほど静かである。
さながら油、それも重油のようなものに満たされているようであった。