岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

夕暮れの古き運河に満ちみちて水おごそかに黒く光れり

2010年05月08日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「夜の林檎」所収。

 横浜・川崎の臨海部には運河が多い。月々の歌会の会場の近くにも運河がある。上には高架式高速道路があって、昼でも暗い。だが、横から差し込む日光が反射して黒い水が底光りする。

 この作品は「運河」誌の「作品批評」にとりあげられたもので、そうした運河を詠んだものである。「水おごそかに」が一首の核心で、その水が「満ちみちている」ところが何やら暗示的だった。

 その運河は高速道路の高架下にあるので、朝昼夕によりほとんど表情を変えない。一日中くろくそして暗いままである。そこに架かる橋をわたって歌会の会場にいくのだが、遅刻しないように1時間前には会場にいくようにしている。

 当然間をもて余し、運河・高速道路・ビル街など都市景観を見て時間をつぶす。高速道路の高架橋やビル街は喧騒に包まれているが、運河は常に重々しい水をたたえている。流れているのかいないのかわからないほど静かである。

 さながら油、それも重油のようなものに満たされているようであった。





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