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朝日新聞の「従軍慰安婦」報道は捏造ではない!

2014年08月12日 23時59分59秒 | 歴史論・資料
朝日新聞 8月5日、8月6日 「慰安婦問題を考える」(上・下)


 この記事は、8月5日に四つの問題点が掲載され、8月6日に「米国からの視線」「研究者の見解」が掲載された。


 問題点の第一は「強制連行」の問題だ。記事によると「強制連行」の定義に研究者によって違いがあるという。だが家永三郎や多くの歴史学者が指摘しているように、「人さらい的」ではないにしろ「有形無形の強制性」があったのは、研究の進展によって明らかになっている。しかし、朝日新聞は「強制連行」という用語を慎重に使うようにしたとある。この「強制性」は誤報、捏造とは言えないだろう。むしろ朝日新聞の慎重さに注目していいだろう。

 第二は「済州島で連行」証言の問題だ。「済州島での強制連行」を証言したのは、吉田清治氏である。彼が何もので、どういう経歴の持ち主かは記事では明らかになっていない。しかし、森村誠一の『悪魔の飽食』で、事実誤認の写真が掲載されたように、旧日本軍の「加害責任」の問題については、その信用度を低下させようと、虚偽のネタを掴まされる場合がある。なにやら謀略の臭いがするが、「済州島」での証言もその類いだろう。「済州島」での証言は虚偽だったが、これをもって、朝日新聞が、記事を捏造したとか、デッチアゲタという批判はあたらない。訂正が遅かったのは事実だが、「従軍慰安婦」の問題そのものがなかったとか、問題自体がなかったことにはならない。済州島以外で、「強制性」の証言はあまたある。

 第三は「挺身隊との混同の問題」だ。早稲田大学でかつて教鞭をとった、宮田節子氏によると、「慰安婦問題」が注目されはじめたころは、研究も充分に進展しておらず、この混同は、朝日新聞に悪意があったとか、捏造の意図があったとか、こういう批判はあたらない。「挺身隊」に関してだけで言うと、広義の「強制性」はあった。植民地支配をよしとしなかった韓国人が日本の戦争に駆り出されていたのだ。また日本国内でも、女学校の学業半ばで、動員された人も多かった。「本当は動員などされないで、勉学や家業に専心したかった。」という証言を今でも聞く。ツイートで「自発的に応募した挺身隊の人に朝日新聞は謝罪すべきだ」というもんがあったが、これはお門違いだ。

 第四。「元慰安婦の初証言」が、朝日新聞の記者の義母だったのでそこで捏造があったのではなかったかという問題。これはお話にならない。身近に「元慰安婦」がいて、証言を聞けば、問題意識を持ってジャーナリストが報道するのは当然だ。「当時は『売春婦』が合法だったので、『慰安婦問題』も合法だった」とするサンケイ新聞の報道姿勢のほうが、人権感覚に欠けていると言わざるをえない。

 研究者のコメント。秦郁彦のコメントは問題がある。旧日本軍の加害責任を過少のに見せようとの意図が明らかだ。かつてかれは「朝まで生テレビ」で、「南京事件の死者はせいぜい5万人か、6万人だ。」と語り、顰蹙をかっていた。人権意識、加害意識が希薄である。

 吉見義明のコメント。「訂正記事の掲載は遅かったが、今後も『被害者に寄り沿う報道を』という提言は的を得ている。

 小熊英二のコメント。「情報公開、自国民への説明、日韓中米の共同研究の提言」。これは重要だ。「南京事件」の国際研究が進んでいるように、「従軍慰安婦」についても国際研究が必要だろう。

 この朝日新聞の記事をもって、「慰安婦報道は捏造だった」「慰安婦問題は虚構だった」と、喜ぶひともいるだろうが、そういう人は、人権感覚、国政感覚の欠如した人間と言わざるをえない。8月6日に「米国からの視線」とあるが、これは国際的に「従軍慰安婦問題」を人権問題として、捉えようとしている証だろう。







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