岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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池上彰の朝日新聞「新聞ななめ読み」:は積極的な提言か

2014年09月13日 23時59分59秒 | 歴史論・資料
朝日新聞「新聞ななめ読み」9月4日 池上彰


 このコラムを僕は読んだことがない。池上彰のニュース解説は、NHKの「週刊こどもニュース」の時には注目していた。時事問題を小学生にも分かる言葉で、かみ砕いて分かり易く解説していた。

 中東問題を論ずるときは、イギリス、フランスの植民地支配の不条理に遡って解説していた。平成の大合併については、功罪両面を論じていた。歯切れの良い口調だった。

 ところがNHKを退職して、フリーになってからの池上は当たり障りのないことを百科事典的に羅列するような解説になったように思う。だから民放の「池上彰の000」という番組は最後まで見たことがない。歯切れが悪いし、エンターテイメントを意識しているように感じるからだ。

 朝日新聞の「従軍慰安婦問題」の訂正記事に対する、「新聞ななめ読み」(朝日新聞9月4日づけ)にもそういう違和感を感じた。

 論点は二つ。吉田証言と、「慰安婦」と挺身隊との混同とを、厳しく批判している。一面の下二段を費やしての文章だから、かなり長文だ。

 吉田証言が虚偽だったこと、「慰安婦」と女子挺身隊とを混同したのは、重大な過ちだ。朝日新聞の「検証記事」で吉見義明が言うように、「研究が進んだ1990年代の早い段階で(訂正)できなかったか」というのはその通りだ。

 朝日新聞の「従軍慰安婦」報道の過誤は、当時の研究水準(研究が十分進んでいなかった)に起因する。だが「従軍慰安婦問題」を初めて本格的に採り挙げ、報道したことの意味は大きい。

 池上の書き方は、朝日新聞を一方的に攻めるだけで、その功績、今後の報道姿勢に対する提案がない。「従軍慰安婦」の被害者に寄り沿うという、最も重要な面が欠落している。

 池上のこの文章によろこんで跳びついたのは、歴史修正主義のジャーナリズムか、「従軍慰安婦」は売春婦だったという人権感覚の麻痺した者たちだ。

 このコラムは「新聞ななめ読み」との表題がついている。

 「ななめ読み」は、あくまで、「ななめ読み」なのだ。問題の核心を見誤っているように思う。





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