岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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新刊紹介「尾崎左永子短歌集成」沖積舎刊

2018年10月04日 01時23分18秒 | 書評(文学)
「尾崎左永子短歌集成」沖積舎刊


 これは歌人尾崎左永子の「全歌集」である。「全歌集」としなかったのは既刊の歌集の作品は収録されているが、これから「星座」「星座α」「総合誌」に掲載される作品が収録されていないし、第13歌集以降の「補遺」に当たる部分に取捨選択があるからだろう

 著者は14の歌集を刊行している。そのうち「鎌倉もだあん」は自選歌集であるのでこれは収録されていない。

 第一歌集の「さるびあ街」から、超空賞を受賞した「夕霧峠」、第13歌集の「薔薇断章」の収録作品と「鎌倉山房雑記」という、歌集未収録の作品、13歌集以降の作品が収録されている。著者が世に残したい「全歌集」といえるだろう。



 「栞文」には大下一真、大辻隆弘、栗木京子、篠弘、馬場あき子、それに詩人の高橋順子が名を連ねている。これを読むだけでも著者の作品理解がすすむ。「サルビア街」の「栞文」もあり、再版ではうかがい知れない資料価値がある。


 著者は佐藤佐太郎に忠実に作歌してきたという(第五歌集「炎環」「後記」)だがこうして作品を俯瞰すると、佐太郎にはない華麗さがある。平安文学を研究し「源氏物語」を現代語訳、講読し、香道の研究家でもある著者の独自性だろう。



 巻末には年譜もある。ここでは58歳から59歳にかけて早稲田大学の大学院で「古事記」の研究をしたともある。この年齢で大学院に通うとは驚きであるし、見習いたい姿勢でもある。



 一読して僕の心に期すものがあった。




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