岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

夕光(ゆふかげ)の歌:尾崎左永子の短歌

2022年09月25日 19時07分47秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・夕光(ゆふかげ)の鋪道動きゆくわが影が壁に当たりていま立ちあがる

「春雪ふたたび」所収。

 これも「NHK歌壇」で紹介された作品。
 「夕光(ゆふかげ)」は「夕日」のことだが、結句の「いま立ちあがる」にいたく感動した覚えがある。「夕日のあたる鋪道におのが影が映り歩みを進めるにつれ、影が建物の壁に当たり鮮明になる」叙景歌だが、「この鋭さは何だ」と驚愕した。

 以前、斎藤茂吉を「黒糖」、佐藤佐太郎を「グラニュー糖」に例えたことがあるが、尾崎左永子の独自性は「鋭さ」にある。緊張感のある一首だ。

 どこの街か、どこの鋪道か、何の建物か、は全て「捨象」されている。「表現の限定」「言葉の削ぎ落し」。

 また情景は薄暗い。悲しさ、寂しさ、孤独感を象徴しているようだ。歩くとき、したを見ながら歩くときは、たいてい「負の感情」を持っていると思うからだ。





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