岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

貧しく生きしものの皺の歌:尾崎左永子の短歌

2022年09月14日 00時13分51秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・ブロッコリの青き球実(たまみ)を選びゐる老いし手貧しく生きしものの皺

「彩紅帖」所収。

作者は夫君の出張に伴って渡米した。1960年代の末だった。夫君のハーバード大学への留学のためボストンに滞在。そこで目撃した「黒人街」の一首である。

 東京育ちの作者には驚きだったろう。「公民権運動」の始まる前。社会からの人種差別の創造に絶する。作者の社会詠といえる。

 地名と時刻は捨象されている。「表現の限定」がここでも効いている。
   黒人のまずしさが「老いし」と「皺」で象徴されている。だが黒人は生きている。黒人への感情移入が垣間見られる。

 尾崎流の「社会詠」であること、佐藤佐太郎との作風の違い、作者はこの滞在で日本語と日本の古典文学に、はっきり目を開いた。さまざまなことを考えさせる作品だ。






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