岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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尾を立てる猫の歌:尾崎左永子の短歌

2022年09月22日 20時06分32秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・あらかじめ迫る殺気を絶つごとく猫が尾を立てて行く冬の坂

「夕霧峠」所収。

 これも「NHK歌壇」で「選者の一首」として紹介された一首。鋭い印象の歌だ。「印象鮮明なるが良し」は斎藤茂吉の言だが、「鋭い印象が鮮明」だ。
 この猫の姿は作者にととっても印象的な出来事だったようだ。

 印象を鮮明にするのは難しい。焦点を絞らねばならぬ。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」作者の言う「言葉の削ぎ落し」。削ぎ落しが少なければ、印象が不鮮明になる。削ぎ落しが多ければ状況が把握できない。作者が「どれを捨て、どれを残すか、早く見極められるなるのが重要」と常々言うのはこのため。

 歌集「炎環」の後書きで「作品が硬い硬いと言われるが私ほど佐藤佐太郎の歌論を身に着けたものはいないと思う」と述べているが、わかる気がする。

 「表現の限定」「音楽性の高さ」「自分の体験として短歌を詠む」。

 そんなことを考えさせられる作品だ。




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