野球選手の松井とイチローがくしくも同じことを言っている。
「自分が考えても仕方がないことは考えないことにしている。」
少しニュアンスが違うが、いにしえの人々もそんな風に考えていたようだ。
あるところで直径3メートルほどの土饅頭が並んでいるところにでくわした。看板があったのでそれを読んでみると、「平安時代中期の合戦で命を落とした数人の若い武士を葬った伝説がある」と書いてあった。
民俗学の成果によると、村落の境に土饅頭や松の木や杉の木を植えて、悪霊が入り込まないようにしたという。それをそのまま詠んだ。
科学技術の未発達な時代には、人知の及ばないものを「魔」と人々は呼んで来た。いにしえの人々に思いを馳せるのも、短歌を詠むきっかけとなりうる。
こんな短歌も歌集「夜の林檎」に収録した。
・首のない石の地蔵が並びおり しばしとどまる境内にして・