原点に帰って・叙景歌を詠む。
「全くの暗闇のようだ。行分けしているだけで詩になっていない。しかし日本には自然を詩にするという伝統がある。そこに回帰すれば何とかなるだろう。」
こんなことを吉本隆明が朝日新聞の文化欄に書いていたのは20年ほど前だった。僕がまだ短歌を始めたばかりの頃。
その後、僕の作品は心理詠、社会詠、相聞に傾いていった。叙景歌の割合が相対的に減ってきた。「星座」が休刊となり、「星座α」が季刊となって心機一転新しい試みをしようと思ったのだ。
この頃晩酌をするようになった。液体は絶対にお腹に詰まらないからだ。夜になると酒を買いに行く。近所のドン・キホーテだ。自宅近くの夜の情景に驚いた。横浜といっても郊外の林の中に団地がある。もともとは農地だったものが、団地に変わり、住民が積極的に緑化して行き、今では植栽費がかさむほどになった。高さ30メートルほどの里山があり、道が一本通っている。
樹木の種類も多い。クスノキ、ケヤキ、マテバシイ、コナラ。花も多い。夜は月も星も見え、季節の星座もよく見える、街灯が点在し薄暗い空間に独特の雰囲気が醸し出される。素材には事欠かない。
酒を買って帰ってくるまで約30分。その間に一首多ければ三首は出来る。それをメモを取らず復唱しながら帰宅し、それからメモに書き留める。
もともと僕はこう考えてきた。
「目に見えるものを表現できずに、心理詠も社会詠もできないだろう。」と。
その原点を今確認している。「星座α」にはすでに完成させた作品を出詠している。ここで新境地が開けるようになれば、と思う。
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