・失望が脱力感になりゆくを抑えて赤き林檎をかじる・
伊藤一彦選。
これも感情を抑制した作品だ。実は半年ほど前に体調が最悪で歌が出来ない日が続いた。それでも詠み続けようと搾りだすように作ったもののひとつだ。
「抑え」ることによって、かえって心情の屈折というか、無念さを言い表せ得たと思う。また「赤き林檎をかじる」と具体的動作でとめたのも成功したのだろう。
佐太郎の作品を読んでいて気付いたのだが、病気なら病気・体調が悪ければ悪いなりに歌は詠えるものだと、このごろ思えるようになってきた。
一時は、短歌を詠むのを断念しようと思ったほどだった。だからこの作品は僕にとって、一つの転機になりそうな予感のするものとなった。ひとつの発見だ。