【ワシントン=渡辺浩生】米人気NO・1のモータースポーツ「NASCAR(ナスカー)」の最高峰、ネクステルカップが開幕。18日午後、フロリダ州デイトナビーチで開幕戦「デイトナ500」の決勝がスタートし、トヨタ自動車が初参戦する。日本車の販売攻勢に押されてビッグスリー(米三大自動車メーカー)にリストラの嵐が吹き、米国内には保護主義的な空気も強い。ファンの心をつかみ「メード・イン・USA」の評価を文字通り獲得できるか。
観客数20万人を集めるネクステルカップは、メジャーリーグやNBAを上まわるほどの人気だ。「米国生産」が出場規定で、過去の勝者は、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーが独占してきた。
ここにトヨタが初参戦する。今秋、米国進出50周年を迎え、現地化戦略を着々と進めるトヨタにとって、NASCARは「米国の車としての認知」(現地幹部)を図る最大の舞台だ。
同社は2004年から、ピックアップトラック部門のシリーズにタンドラを参戦させ実績を積んできたが、今季は頂点のネクステルカップにカムリを投入す る。同車は昨年44万台以上を売った5年連続の全米ベストセラー。トヨタがクライスラーを抜き年間3位になった立役者でもある。
しかし、デビューを前に「逆風は強まっている」(幹部)という。販売台数で年内に全米2位、世界首位はほぼ確実というトヨタに対し、クライスラーは14 日に大規模なリストラ計画を発表し、GMへの身売りも取りざたされている状況。ビッグスリー合計の人員削減も約10万人、工場閉鎖は約20拠点に上る。
保護主義的ムードが漂う中、米国車の誇りを賭けた18日のレースに、トヨタは全43チーム中4チームを送り込む。「トヨタとの戦争になる」という過激な声が他チームから上り、ネットではトヨタを攻撃するファンのサイトも現れた。
直前の予選では、今季からトヨタチームでハンドルを握る2度の優勝経験を持つマイケル・ウォルトリップ選手の車の燃料に添加剤が混じっていたことが発覚。クルーのチーフらが罰金を受け、出場停止処分になるなど、すでに荒れ模様だ。
しかし、「成績が翌日の販売に影響する」ほどPR効果が高いこのレース。「もし、トヨタが勝ったら、そのときから米国の一部になる」。カムリを運転するひとり、デイブ・ブラネリー選手は米紙USAトゥデーに語っている。
全米で10工場を操業する米国トヨタは経済的には現地化しているが、ファンの心をもつかむことができるだろうか。
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【用語解説】NASCAR
四輪市販車をベースに改造を施したストックカーの全米レース。楕円形のコースを超高速で競う。1948年に初開催。地域シリーズやピックアップトラック 部門のクラフツマン・トラック・シリーズなどの部門があるが、最頂点に立つのがネクステルカップ。テレビ視聴率はメジャーリーグ、NBA(プロバスケッ ト)を上回る人気がある。
【過去記事】保守記事.161 時代錯誤な保守記事.161-2 時代錯誤な