真夏の怪談
・・・一話目
(夜行列車)・
12まずいな・・・

先程から
後方に気配が集まっている
私は山目くんを気遣いながら走っていた



山目「はぁはぁはぁはぁ


」
透明「(
山目くん、かなり息が上がっている
本来なら思念体である彼は疲れたりは
しないのだが、如何せんそれを説明して
意識させる時間は無いか・・・
)」
通常、思念体は疲れたりはしない

しかし自分が思念体だと気がついていない
状態では
肉体があった時の意識が優先され
疲れを想像してしまう・・・。
六羽「(
ご主人たま
なんで飛ばないの
飛んで帰ればすぐだよ
)」
透明「(
う~ん
・・・山目くんは飛ぶという
意識を持っていないからね
この状態で飛んじゃうと、思念体が揺らいで
帰った時に影響出ちゃうから・・・)」
六羽「(そっか~

う~ん・・・あっ

六羽良いこと思いついた

)」
透明「

」
六羽「(
飛行機作っちゃえば

)」
透明「(

・・・なるほど~

飛行機は無理でも車なら
六羽
でかした偉い
)」
六羽「(
てへへっ
)」
透明「山目くん

あそこに車があるから
そこまで頑張って

」
山目「は、はひ

はぁはぁはぁはぁ

」
想像力全開

私は瞬時に車を創造する

領界であれば
自分の想像を固着化することができる

まあ、細かい部分まで想像できるのは
普段使っている車になってしまうが、
それでも無いよりはましだ

これは幽体である私でも可能なこと・・・
しかし
思念体と違い、幽体は本体の気質の
10分の1の量しか持ってくる事ができないため
使える力にも限界がある
そのかわり、
この世界で幽体が霧散しても本体は無事なのだが、思念体はそうは行かない。
思念体は想像の力をいくらでも使える代わりに
思念体が消滅すれば本体の意識が戻らない可能性がある・・・つまり意識不明の状態。
山目くんは
思念体の力で、電話ボックスを作り出したのだろうけど、それには
気づいているわけもないので、
本来の世界で出来ないと思っていることは
この世界でも起こすことができないだろう・・・。
透明「よし

」
山目「はぁはぁはぁはぁ



」
何とか車にたどり着いた私は、
後部座席に山目くんを乗せ、
急ぎこの場を離れることに


後は、車の速度をさっきの電車のように調節して
そのまま境界の裂け目に飛び込めば
透明「
ゾクッ
」
突然、何か得体のしれない恐怖を感じる

山目「
せ、先生
う、後ろから
さ、さっきの電車の女が
」
透明「電車の女

」
バックミラーを覗き込むと、
四つん這いなのに
物凄い勢いで近づいてくる女性の亡者が
何かを叫びながら近づいてくる
透明「うわっ

こぇ~~~~っ

完全にホラー映画じゃん


」
電車の女

きっと、
山目くんが怖いと思った
相手が呼び寄せられているのかもしれない

車のスピードはかなり早いはずだが、
その女性亡者はジリジリと距離を詰めてくる

山目「
せ、先生
も、もう隣に

」
透明「えっ


」
いきなり並ばれた

さっきまで、距離があったのに・・・。
山目くんの恐怖が逆に相手を引き寄せている
しかし、この状況で山目くんに怖がるな
という方が難しい・・・

亡者「
ケタケタケタケタ
」
山目「
うわ~~~~っ
」
女性亡者は、こちらを見ながらケタケタと
笑い並走している

その光景に山目くんの恐怖はどんどん加速して行く

透明「くっ

これは困った・・・。
(
このまま恐怖に呑み込まれれば、山目くんの
思念体が持っていかれる可能性がある
)
六羽
運転代われるか
」
「
ポンッ
」
さっきまで隠れていた六羽が姿を現し、
私の膝の上でハンドルを握る
山目「うわっ

な、な、な、なんですかその子

」
透明「(もう、何にでも恐怖を感じるのね

)
大丈夫

この子は味方だから

六羽

アクセルは踏まなくても進むように
しておくから、ハンドルだけよろしく

」
六羽「
ブ~~~~ン
ブ~~~~ン
楽し~~~~ぃ

ご主人たま
運転は任せて
(
シャキーン
)」
おっ
何か、六羽がいい顔している
おっと、そんなこと考えてる場合じゃない

私は映画のカーチェイスばりに助手席に移動し
助手席側のドアを蹴破る
目の前には女性の亡者が今にも後部座席の
山目くんに飛びかかろうとしている

透明「(
後一回なら幽体を維持できるはず・・・)」
気力を使いすぎている私の気質残量は後わずか・・・。
これを外せばゲームオーバーだ
私は印を結び、さきほど電話ボックスで使った
陽の気質を一点に集中し打ち出す
その瞬間

悪路にタイヤを取られたのか
車がバウンド
陽の気質弾が女性を亡者の後方へ其れてしまう

透明「
し、しまった
」
こ、これ、
私の悪い癖じゃ

人間というのは、何故か土壇場で悪い想像をしてしまう

特にこういった修羅場に慣れてしまっている私は
常に
最悪を想定してしまう癖がついている

しかも、ここは領界

その想像はそのまま形になってしまう

亡者「
キィ~~~~ッ
」
女性亡者が車に張り付き、
後部座席の窓ガラスを割る
亡者の腕が山目くんに伸びる
続く・・・。
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