ふびとくるて ・7
柚木「それって・・・。」
透明「漢字で書くと、こう言う字
不美徒苦流手」
柚木「な、なんだか
暴走族の人が
つかっている漢字の羅列みたい・・・
」
透明「
あははははっ確かにそうだね
でも、これはいわゆる漢文の一種で、
訳すとこうなる
」
ふびとくるて
「不美徒(己の内なる美意識や善行に背く行動をとる者)
苦流手(
その流れは苦となり手段とし返ってくるものなり)」
柚木「こ、これって・・・
」
透明「昔の人も、今の柚木さんと同じようなことで
悩んでいたのかもしれないね
不美は、
人間の負なる感情
怨み・辛み・妬み・嫉妬・猜疑心などがこれに
あたるのだけど、それを行動に出してしまえば
その想いは必ず
苦行として流転し、相手の手段として
返ってきてしまうものなんだ
だからといって、我慢しすぎるのも良くないけど、
自らがこの理を知ったうえで、不美を行なうかどうかは、
常に考えなければならないものという、戒めみたいな
言葉なんだと思う
」
柚木「ふびとくるて・・・。
本当にそうかもしれませんね・・・
私は、自分のことで精一杯で、上手く行かないことを
全て周りのせいにしていたのかもしれません
自分の気持ちや行動が、相手にどの様に思われている
のかも見えていなかったですし、全てにおいて
自分の都合の良いように考えていました・・・
」
透明「そうだね
これは柚木さんだけではなく、
人として人に関わる以上、誰もが心に留めておかなければ
ならない教訓なのかもしれない
もちろん、私自身もそうだけどね
」
柚木「くすくす
先生
ありがとうございました
凄く勉強になりました
私、一から出直そうと思います」
透明「
」
柚木「今の状況を起こしてしまったのも、自分ですが、
今から、会社の体制について行くことは難しいと
思うので、自分が自分らしくいられる会社を探して
みようと思います
」
私、自分の責任から逃げることばかり考えて
自分で決めることも放棄していたのだと思います
先生に決めてもらえば、自分の責任から解放される
ような気がしていたんだと思います・・・
」
透明「柚木さんは、立派だよ
この短時間でそこまで気づけたのなら、必ず次は
自分にあった職場が導かれてくるはずだよ
人間は、その環境や事柄をどの様に受け止め、
自分自身の肥やしにできるかで、先の人生が簡単に
変わってゆくものなんだ
今を悲観すれば、悲観する事柄だけが次々によってくる
逆に、このことを教訓にし自分を見つめ直すことが
できれば、自分の幸せというものを見据える目が
養われる
確かに、そこまで行くには色々と考え悩むことも
沢山あると思うけど、もともと木人図には、
自分が乗り越えられない苦痛は、描くことはできないから、
必ずその先に、幸せは待っている
逃げるのでも立ち止まるのでもなく、
ましてや何も考えずに
無謀に乗り越えようとぶつかるワケでもない
人生の苦行は、考え悩み行動し吸収して糧とし判断
することで、はじめてその事柄に終止符が打たれ
乗り越えることができ、前に進めるのだと思う
柚木さんには、今回のことが正にそれに値する
ここまでくれば、柚木さんは木人図の幹に一直線で
戻ることができると思うよ
」
柚木「
本当ですか」
透明「うん
大丈夫
だから、自信をもって転職活動してごらん
必ず相性の良い会社に恵まれると思うよ
」
それから、私はもう少しだけ、柚木さんの気持ちの
メンテナンスをし鑑定を終える
柚木さんは気持ちも新たに、笑顔で未来を見据えた
良い顔で帰って行った・・・
透明「はぁ~
今回は柚木さんが自分で答えを導いて
くれたから、
嬉しかったなぁ~
ふびとくるて・・・私も常に意識しておかないと
いけないな・・・
」
透明「
げっ・・・・・
」
一馬「
さっきの続きしようよ~~~~っ」
ふびとくるて・・・
一馬くんには、まだまだ無縁な言葉のようである・・・
一馬「
王手 」
透明「
ひえ~~~~っ 」
完