10月27日大千秋楽の観劇記です。
泣いても笑ってもこの日が最後……というかプロローグの後にドドーンと出る題字の時点から既に感極まって泣いてしまったのですが
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やっぱり目と頭と心が登場人物の数だけ欲しいと思うほど全てのキャラクターが愛おしくて別れ難かったですね~~とにかく悔いのないように、というのは難かったけれど(苦笑)200%で観劇してこれでもかというほど泣いてきました。
大楽ということで舞台から伝わってくる熱量もいつも以上に大きいものがありました。特に風間くん演じる艇長さんは感情が前面に出ていたように感じました。もちろん変に滑っているという意味ではなくて熱いものが伝わってきましたね~~今までで一番良かったと思う
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そんな艇長さんと同じ“側”にいながらも対照的でもある通信長さん、この2人の関係ってホント面白いなぁと……1幕、嵐の後で通信長さんが船長さんに「船を操るのが上手いな」と言うけど、漁師たちのスキルや知恵……プラス駆け引きできる余裕と器を褒めている裏で船を操るのが上手い=艇長を操るのが上手いというニュアンスが出ているのかなと想像して思わずニンマリ
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まぁ勝手な解釈ですが(苦笑)どっちも正しくてどっちも悪いという面が言葉や行動の1つ1つから“リアルな人間っぽさ”が垣間見られて何とも可笑しくて愛おしい関係とキュンキュンしてしまいました
艇長&通信長の関係に限らず、この作品では各登場人物の1対1の関係がすごーーくツボりました。立場は違えど同じ役割を担う者同士あるいは正反対の者同士、その人にしか言えないことがそれぞれにある。漁師と軍人、人生の先輩と未来ある若者という関係の中にあるもの……見習い君と水兵さんたちの瑞々しさ、無線士さんと通信長さんの俯瞰した賢者の視点、そして船長さんと艇長さんが背負っている上に立つ者に課せられた責任と孤独……等々。艇長さんの孤独(ある面では孤高なのか
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)が心に引っかかって仕方なかったのが海に落ちた上村二等水兵を助ける場面。漁師たちはもちろん軍人たちも助ける方向にいる中で艇長さんだけが命令遂行のために助けない選択肢を選ぶ。上村が救出されて皆が集まって喜びあっている輪を離れて船尾の方で一人項垂れる、その時の存在感が何だか痛々しかったんですよね~~彼もまた責められるべきではないというか、いろいろなものが綯い交ぜになった気持ちがあったのではないかと……そういう複雑で緊張したものを持ち続けてからの戦後。船長さんとの再会を果たして吉祥丸の甲板に上がった時に溢れ出るものがあったんだろうな~~涙する艇長さんもとい大塚さんとそれを抱きしめるのではなく背中をそっと抱いてあげた船長さん、、、これまた上に立つ者の大きな愛を感じて号泣しちゃったよ~~
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ほのぼのシーンもサービス満載。見習い君の手紙を添削する場面では、お「毛」つだいのツッコミから「お前、毛は生えたのか?見せてみな!」の下ネタ炸裂
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そして通信長&無線士のアドリブ対決、、、今回は無線士さんが缶詰を指さしながら自分はヒンドゥー教徒なので宗教上の理由で食べられないんです!と若干無理がある
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カミングアウト……ってことは缶詰の中は牛肉な設定か
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そしてその後に見習い君にやったように「あ、艇長さん、バカが見るー
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」を何と通信長さんに!!!やりすぎ的な空気が流れましたが大楽ならではの無礼講
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そうそう、あと大楽サービスがもう1つ!戦闘態勢になって持ち場につくまでの時間が遅いと砲術長が檄を飛ばして全員に腕立て伏せを命じる場面。砲術長さんがドSっぷりを発揮。いつもなら5回くらい???だったのが号令の笛を一向に止める気配なく20回。途中で無線士さんだったかな?え、まだやるのって感じになったんだけど容赦なかったわ~~客席は大爆笑
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ふと思い出したのが「おのれナポレオン」の千秋楽。宮沢りえちゃんが野田さんに腹筋運動を通常以上の回数やらせてたなぁ~~
屈託なく人間くささや身近さを出す漁師とは反対に何かにつけてめんどくさい程の厳しさに身を置く軍人たちですが、制限された立場の中にも優しさが垣間見られるというか出来る範囲内で気遣い合っているように感じる部分もありました。それなら最初から戦争なんかするなよ
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と思ってしまうのですが(爆!)2幕で砲術長の容態を気にして落ち込むはじめ君に通信長さんは気にするなと言っていたと伝える。ん?と思ったんですよね~~本当のところは違うのではないか、後のシーンで意識はないが今は大丈夫みたいなことを艇長さんが言っていたような気がするし。厳しいことを言っている艇長さんも何だかんだ言って砲術長さんの足のケガを心配してコッソリ通信長さんに気を配ってほしいみたいなことを仄めかしているところがあるし、通信長さんや水兵さんたちも何かにつけて気にしているし、、、まぁ戦争をするための“利用”と言ってしまえばそれまでではあるのですが(爆!)軍人と言えど一人の人間なんだなぁと思うとその姿が痛々しいとまで思うこともありました。この船はどこに行こうとしている?の問いかけに誰も答えられない……未来を見ていない、見てはいけない、見られない、何か凄く悲しかったです
それを船ごと救ったのが内野船長さん
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もうぅ~~カッコイイのに随所に愛らしさが滲み出ていて男前の素敵な船長さん
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密かなツボ
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上村二等水兵を海から引き上げる時に操舵室から身を乗り出して右手を掲げてよーし!よーし!みたいな感じで引き上げる仕草をするんだけど、その時のうっちーな手が好きすぎて
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真剣な場面なのにゴメンナサイ
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あと、、、クジラを見ている時の屈託のない笑顔とか、見習い君が漁労長から舵取りを教えてもらっているのを見守っている時の温かい笑顔とか、ホント沁みた~~
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内野さん演じる菊池太平という男、、、具体的に教え諭すことがなければ余計なことを言うこともないけど内面にいろいろなものを積み重ねたものを持っている器の大きい海の男なんだと思います。それでいて子供のような素直で無垢なところがある。良い意味で大人で子供という感じかなぁ~~本当に本当に愛おしい
横浜の初日の時に感じたのとは違う感覚……理論的な裏付けや学はないけど隠そうとしている真実を一番見通している人物だと思っていたのですが少し違うような
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例えば戦争の実際、、、表立って言わないだけで知っていることがあるというのではなくて、本当に知らなかったけど実際の戦闘の一片を目の当たりにして何かを得る。2幕で吉祥丸がB29の攻撃を受けた時に上野は一度実戦を経験しているから戦争の恐ろしさを分かっているけど船長さんは超絶ビビッている。ここで戦争の恐ろしさを本当の意味で知ったのではないかと……一番大切なことを見る目を持っていて一を聞いて十を知る力のある人であるからこその後の行動だと思うのですが、でもね~~船長さんの真っ直ぐなところは本当に素敵だと思いました。決戦前夜、艇長さんに対して見習い君への気遣いを素直に感謝して自分たちはそれに気づかなかったことを謝って頭を下げる、今この瞬間なら言えると思ったのか面と向かって命の大切さを必死に訴える、、、この姿勢は船長さんの隠せない愛らしさから来るのかもしれません……ね?!
1つ1つの命は小さいけどポイっとしていい命はない、この船の奴らは凸凹で1つくらいしか良いところがないけど足りないところを補い合っている、、、最後に吉祥丸の乗組員たちが1つになってB29を皆で撃退するところは大号泣
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艇長さんの「やってみろ」は心に響きまくったわ~~その前の旭日旗と一緒に大漁旗が上がって金毘羅ふねふね~♪のところで漁師たちのプライドと粋を感じて既に涙涙だったんだけど、吉祥丸に乗っている人たちが未来に向かって立ち向かっていく姿……小さいけど大きな大きな命を感じました。そして物語の最後で語られた「命繋げていきましょう。それでええんではないですか。みんなそれを望んでいる」という船長さんの言葉。みんな=生きている人、演じている人、観ている人、そして亡くなった人たちもきっとそう思っている。生きている者たちの思い込み、そうあってほしいという願いや救いが込められているように感じて涙が止まらなかったのですが、まさかね~~カテコで井上さんが帰って来られなかった人たちの鎮魂の物語と仰った時には本当に驚きました。この最後の船長さんと大塚さんのやりとり、帰ってこられなかった命、戦争の悲惨さが目の前では表現されないのに船や2人の姿からヒシヒシと滲み出ていました。「平和はなにより」「んだね~~」忘れられない、忘れてはいけないシーンだと思いました。