6月10日、初日の観劇記です。
~あらすじ~
塩冶(えんや)の浪人、民谷伊右衛門は、自分の過去の悪行故に離縁させられていた女房、お岩との復縁を舅の四谷左門に迫り、それが叶わぬとみるや、辻斬りの仕業に見せかけ惨殺する。左門の死体を見て嘆くお岩に伊右衛門は親切めかして仇討ちを誓い、それに乗じて復縁する。
民谷の家に戻ったお岩は、産後の肥立ちが悪く床に伏すようになり、伊右衛門はお岩を疎ましく思い始める。そんななか、隣家の伊藤喜兵衛から贈られた「血の道の妙薬」を飲んだお岩は、たちまち相貌が崩れ悶え苦しみ、放置してあった短刀に刺さり死ぬ。実は喜兵衛は、伊右衛門に懸想した孫娘のお梅の思いを叶えようと毒薬を渡していたのだった。伊右衛門は、家宝の薬を盗んだとして奉公人、小仏小平も殺し、お岩、小平の死骸を川に流す。
やがて、二人の怨念は伊右衛門を襲い、苦しめる。(公式サイトより)
序幕・2幕→休憩20分→3幕・4幕・大詰の合計3時間5分。舞台と客席の間にはオケピみたくエリアが確保してあるので少し離れています←地方公演で大ホールしかない時などに前を潰してかなり奥まったところにセットを組んでいることがありますが距離感はそんな感じかな
そのエリアは舞台仕掛けや黒子さん用スペース、3幕冒頭は川として使われます。前半と後半で微妙な変化があって後半は人が歩けそうな幅の板が……耐久的に無理っぽいけど。そんな妄想をしていたらヅカの銀橋じゃないんだから
と友人に突っ込まれました(笑)
セットは至ってシンプル。序幕・2幕は床は白い布1枚。あとは白い壁が後ろに立っているだけ(場面によって斜めになったり障子に見立てられたり血をあらわすようなものを流してみたり…)です。3幕・4幕・大詰では人形芝居で使われる箱のようなセットが一部ありましたが、後は舞台に一切何もないだだっ広い空間で物語が展開。照明の効果抜群でとっても綺麗に仕上がっている舞台になっています
今回は前方のかなり上手側のお席だったのですが、大がかりなセットがないので端っこの方でも死角になるところはなくて観やすいと思います。
ただね~~見えてはいけない部分も(笑)3幕で伊右衛門が釣りをするシーンがあるのですが、2匹目の大きい引きでめちゃめちゃ大きい魚?ナマズ??に振り回されるところで小道具が早い段階で見えちゃったんですよね~~まぁそう来るだろうなとは思っていたのですが。あと、伊右衛門の夢のシーンでセットの出入り口のドアがいかにもドアという感じな上に蝶番まで見えちゃって・・・しかも大道具係の人?が思いっきり白いシャツと黒パンツ。非日常の中で楽しんでいたのが日常に引き戻され……センターブロックだと見えないようですが、さすがにここまで露骨に見えるのはちょっと……せめて黒子の衣装を着てくれよ…
内容はもちろん!あの有名なお岩さんの怪談話。歌舞伎の東海道四谷怪談を観たことはありませんが、多分こんな感じなんだろうなぁというイメージはあるような?ないような??あと、、、原作も加味して考えてみるに……今回の四谷怪談はツッコミどころ満載
どうなんだろうと思うところは無きにしも非ず。スタンダードと位置づけていいものかどうか悩ましいところですが、王道の???歌舞伎の四谷怪談と比べてみたいなぁと思うのですが、一方で原作とか伝統とか歴史とか、そんな境界やテリトリー云々は全て取っ払って目の前で表現されているもの“だけ”を味わう方がいいのかなぁと……乱暴な言い方をすれば(笑)割り切って楽な気持ちで楽しもうよ!そんな面白いお芝居です。七五調のセリフも思ったほど取っつきにくくなかったですね~~時代劇の決め台詞の場面に慣れているなら寧ろ心地いいかも
日本人が聞いて耳心地の良い韻律と内野さんがおっしゃっていたのを実感しました!様式的な展開も演出は一見すると大仰でツッコミまくり。そういうものだと思うしかないのも本音なのですが(笑)慣れてくるとその奥に描かれた深いものが見えてくるところは新しい舞台の発見でした。そういうところは時代劇にも通じるのかなぁ~~あとは新感線の舞台にも共通する一部分がある感じかな。とにもかくにも
バリバリの歌舞伎と昭和の東映時代劇の中間という感じかな~という舞台でした。
目が点だったのは何と言ってもこれでしょ~~
乙女の祈り
毒薬によって醜い顔にされたお岩が伊藤家に“お礼参り”をするべくお歯黒と化粧をする場面&ラストの伊右衛門捕獲の大太刀回りで突然思いっきり西洋なピアノ曲が流れてきた時には目が点でした
いや、その、あの、江戸時代の話にコレ……です…か?みたいな
ただ偶然の産物というか偶然の発見というのでしょうか
今回は2列目の端っこに近い上手側のお席で舞台を真横に近い視界で観る感じだったんですね。大きいセットがないので他演目に比べて視界が開けてめっちゃ観やすかったのですが、ちょうどお岩がメイクをするシーンで原形を保っている左半分のみが見える状態になっていたんですわ。その横顔は綺麗なまま……お岩が動く時に醜く変わった右半分がチラチラと見える。そこでハッとしたんですよね~~壮絶なシーンの中に「女」の真実を見たというのかな、伊右衛門の妻という意味での1人の女としてのプライド、そして見た目は人が恐れるようなものでも真の姿は可憐で可愛い心を持った乙女。偶然とはいえ崩れた顔の部分が見えないことによって伝わったものがある……そういう意味では「乙女の祈り」という異質な、でも分かりやすい
曲によって引き出されたものがあるのかなぁと思うところがありました。
登場人物は秋山菜津子さん以外は全て男性。いや~~皆さん素晴らしかったです
有薗さんのお梅ちゃん、もうぅ~~初っ端からもっていっちゃいました。面白すぎて盛り上がりました
伊右衛門がお岩を見限ってお梅を……いいのか、こんなんで?と思わず突っ込みたくなるというか(爆!)あと、、、乳母・お槇を演じた木村靖司さん!立ち居振る舞いといい間合いといい上手すぎる~~時々ハッと「そういや秋山さん以外は男なんだよなぁ」と思い出さないと忘れてしまいそうな程でした。
内野さん演じる伊右衛門
ほっっっんと悪いヤツです
その場しのぎの自分大事のダメンズ……なんですけどね~~やっぱり嫌いになれそうにない(笑)いや、マジ酷い男なんだけど、それが分かっていても惹かれずにはいられないというか毛穴から滲み出る隠し切れない女を惑わす色気とでもいうのでしょうか。そういうオスの性を分かっていないと女という生き物はやってらんないよなぁと思う自分はダメンズウォーカーなの……か
でも、どーしてお岩は伊右衛門の元に戻ったのか。父親の仇討をしてもらうため
それならどっちもどっちという感じもするし…なんて思うと呪われちゃうかな?
そこら辺がよく分からないので次回もう少し考えながら観たいと思いますが……あとコレ
ラストの大太刀回り。ずっとずっと観たいと切望していたナマの殺陣
思う存分堪能できてとても嬉しかったですね~~やっている方は大変だと思うけど(爆!)最後の方は内野さん、肩まで動かしてゼーゼーハーハー凄い呼吸でした。このシーン、、、北島三郎なんて目じゃない!すんごい細か~~~い雪がこれでもかというほど降ってくる中での伊右衛門捕り物帳!!!何か無性に切なかったんですけどね~~それはそれは美しい場面でした。