5月15日大千秋楽の観劇記です。
~あらすじ~
時は1930年、世界大不況の真っ只中。場所は戦前の関西のどこか、ヤクザたちが集う港町。日本人とブラジル人のハーフ藺牟田オセロ(橋本じゅん)は藺牟田組組長。抗争で痛めた体を治療する為に入院した病院で、医院長の一人娘・モナ(石原さとみ)に出会う。退屈な毎日を送る箱入り娘のモナは、自分の知らない刺激的な世界の話を聞かせてくれるオセロに惹かれ、結婚。オセロも若くて屈託のないモナを気に入り溺愛している。そんな中、次期若頭候補である藺牟田組ナンバー2・伊東郷、通称:ミミナシ(田中哲司)はオセロの不在中、代わって界隈をおさめていた。しかし、同じく藺牟田組で異色の一流大学出身エリート・汐見秀樹(伊礼彼方)から聞いた、組長の言葉に驚愕する。
「次期若頭は汐見だ」
オセロの右腕として藺牟田組に仕えてきたのに、ケンカも出来ない汐見がなぜ……?実は、ある事からオセロを憎み、晴らすチャンスを伺っていたミミナシだったが、これをきっかけに心の奥底に眠らせていた憎しみが一気に溢れ出し、ついにオセロをおとしめる陰謀を企てる……!!オセロとオセロを取り巻く全てに憎悪するミミナシは、汐見、モナ、そして倶楽部のオーナー・三ノ宮亙(粟根まこと)、ミミナシの妻・伊東絵美(松本まりか)、ミミナシを慕って行動を共にする絵美の弟・沖元准(大東俊介)らをも言葉巧みに操り、自らの悪計のコマとして彼らを動かし始める──。誰もが翻弄され、愛と憎しみが絡み合う中、オセロと最愛の妻・モナが辿り着く先は……!?
「みんなまとめて地獄につれてったる。さぁ門は開いたで。とびっきりの地獄の始まりや!」
(公式サイトより)
久しぶりの新感線☆蛮幽鬼以来じゃないかな~~その間観たかった公演はあったのですが予定が合わない等々で泣く泣く諦めたということが続いていたので

そして最近のじいおなじみの千秋楽観劇デシタ(苦笑)
設定は戦前の関西、ヤクザの世界。出てくる地名が「神部(かんべ)」→神戸ね

「小豆島(あずきじま)」→二十四の瞳のしょうどしま


「瀬戸中海」→瀬戸内海……分かりやすっ

コテコテの関西ベースの新感線のノリで下ネタ満載、確実に放送できないセリフが随所に入り乱れていましたが、物語の内容はそのまんまシェイクスピアのオセロでした

ま、登場人物の名前からして思いっきり原作の登場人物名をもじっているわけで。その原作、確か小学生or中学生くらいだったのよね~~4大悲劇ぐらい知っとかねば!と思って当時からあまり好きではなかった戯曲タイプの文章を読んだ覚えがあります。松岡和子版じゃなかったのだけは確か……となると小田島版、福田版、木下版のどれかだと思うんだけど……間違っても明日のジョーではなかったのだけはホントなので大丈夫

ま、当時はストーリーを追うだけで深く考えてはいなかったけど、今回改めて舞台で観てみて(直球勝負の正統派オセロじゃないけど

)やっぱシェイクスピアって凄いわ~~と嵌められてしまいました。しかも、アホでくだらないのに何気に要所要所は押さえて作品の奥行きや深さは外さない新感線なのでね~~オセロの世界観、大事な部分はちゃんと入れ込んでいたように感じたので心憎いな~と

ただ、、、新感線meetsシェイクスピアとなると、やっぱり頭を過ぎるのがメタマク。プロデュース作品とRを冠した音楽物を比較するのはあまり意味がないような?と思いつつも、つくづくメタマクは

奇跡の遭遇と結集

だったんだな~と思いましたね~~そうなると今回のオセロは……もう少し捻りや工夫があっても良かったのかな~と思う部分もなきにしもあらず

オセロをモチーフにした別の戯曲というのであれば納得なんだけど、仮にもオセロというタイトルを持ってくるからにはちょっと……なんとなく“小物感”があったような気がしました。ストプレがメインだけど歌あり(伊礼君がいるしね~♪)殺陣あり映像あり、悪くはないけど中途半端な感じだったし

そうそう、オセロを陥れる黒幕はイアゴー=ミミナシなんだけど、「半ブラ」のオセロを疎んで抗争に講じて殺そうとした藺牟田組の上に君臨している組の長たちが最後にミミナシを捕えてオセロ側に立って今までの悪事を諫めるのは??だったのよね~~何か辻褄が合っていないような感じがして気持ち悪かったんだけど……ま、ミミナシに翻弄され藺牟田組内の秩序を乱したということでオセロを排除できたわけだからそれで良かったのかも


いきなりマイナス方向に振ってしまいましたが、そうはいっても良い舞台でした

まさかね~~2幕でこんなに泣かされることになろうとは思いませんでしたよ



悲劇とはいえ新感線、盛り上がって終わるだろうと思いきや……いや~~不覚でした。モナがオセロのことを語るセリフ、、、気がついたら涙がボロボロ流れてどうしようかと思いましたよ

「あん人の話は面白いけどホラばっかりや。でも真っ白な心を持っとる、裏の裏には真実があるんや。汐見さんには裏がない。見た姿そのまんまや。人の心の色が見えたら……愛する人の心の中が見えたら…」と、こんな感じの語りがあるところで、もうぅ~~切なくてもどかしくて

人を好きになったことがある人なら誰でも思い当たるところが心のどこかにあるのではないだろうか。あるいは恋愛以外の関係でも大切に思う人に対してそういう風に思うことがあるのではないか。そんなことを考えていると胸がきゅぅ~~んとしちゃって



そして、、、事実と真実は違うと言われることが世の中にはたくさんあると思うのですが……そんなアレコレも思い出してしまいました。
モナ、絵美、おかまちゃんの沖元の語らいにもズッシリ来るものが

「(ミミナシが)下っ端の頃が一番幸せだった」と語る絵美……大物になって人が変わると昔を懐かしむというありがちなセリフには苦笑してしまいましたが、彼女は世界なんて自分のものにならなくていいという。沖元は逆に世界を手中に収めたら、どんな人でも人を愛することが許される、それが普通の世界にしたいと言う。親にさえも否定され続けてきた沖元の“マイノリティー”の哀しさと強い思いが籠った切ない願望。そして純粋すぎてどちらも選びきれないモナ。三人の並んだ場面が凄~く象徴的に見えたんですよね~~全て肯定も否定もできなくて、全て人の心に共存している思いだから

そして沖元が犯した罪……原作では絵美→エミリアの役割で完全に見せ場を持ってったな~という感じだったのですが……ミミナシを愛するが故に知らなかったとはいえ、、、やってしまったことを悔いる怒涛の長セリフ、息を引き取る直前に言った「天国にはなんの差別もない、人の気持ちだけがあるんですよね」という言葉にはダダ泣きしちゃいました


オセロ@じゅんさん、復帰おめでとうございますぅ~~



早速ネタにされてましたが……腰痛

それもしつこく(笑)随所にゴキッという効果音ありだし。でもオモシロ可哀想で純粋で可愛いオセロのキャラクターにピッタリ。寝室でのモナとのバカップルぶりとか

思わずメタマクの回転ベッド上のバカ夫婦っぷりを思い出してしまいましたが、その「小ささ」が堪らん!←褒めてます

ほっっんとモナが大好きなんだな~というのがヒシヒシと伝わってきましたね~~「ここやない、ここやないとずっと思ってきた。モナと出会って初めて俺の居場所はここやと思った」……泣けましたね~~浮気をしていると信じきってモナを殺すオセロ。その時の躊躇い感がたまらなく哀しかったです。1幕で「父親さえも欺いたのだから、お前のことも欺くかもしれない」とモナ父が言うセリフがあるのですが、ミミナシの思惑に翻弄されてモナ父の言葉が頭を過ぎる……考えようによったらサラッと言った大した言葉じゃないのかもしれないのに。。。
モナ@石原さとみちゃん、そりゃあ可愛いわ

オセロが地面に穴を掘って「か~~わ~~い~~い~~」と叫んで埋めたくなるキュンキュンする気持ちは分かるっ

冒頭のギャグは無理感あるな~と思ったのとキャピキャピすぎてセリフが微妙という感じはあったけど、関西出身じゃないのに関西弁のセリフは健闘していたのではないかと。オセロとのキスシーンの後はじゅんさんのメイクがさとみちゃんの顔に付いて「顔が茶色や。犬みたい」と突っ込まれてるし(爆!)まぁ演技がどうこういうよりも役柄に助けられてる部分はあったと思いますが

純粋ゆえのおバカ度

どうしてそのタイミングで汐見の話をするかな~と呆れましたが、それがモナという人なのよね。ヤクザの治療という裏稼業も担っていた父親……汚いものは見せないように育ててきたと言っていたけど、そういう世界を隣で見ていたからこその純粋な目があったんだと思うんですよね~~「みてくれやないねん、肌が白うても心が黒い人はぎょーさんいます。白うても黄色うても血は真っ赤、体に赤い血が流れとったら・・・。許してくれとは言いません。せめて、受け止めて」……そういえば青い血が流れている人がいなかったっけ?と突っ込んでスミマセン


そういう純粋さがあったがゆえに招いた悲劇でもあったんだけどね~~
ミミナシこと伊東郷@田中さん、まさに影の主役と言ってもいい重要な役どころ。2幕ではじゅんさんにさんざん面白いことを仕掛けられて吹き出すのを抑えながら喋らないといけなくなって可哀想だったけど笑わせてもらいました

どす黒い悪の塊には見えなかったな~~悲哀を感じずにはいられないイアゴー的存在感でした。嫉妬って相手に対する尊敬や好意の裏返しといえるとも思うのですが、ミミナシのやっていることがオセロへの歪んだ好意にも見えて……

最後に赤穂組の組長がオセロとモナの亡骸を指差して「お前らが見たかった光景だ」と言ったけど、これってミミナシに一番聞かせたかった言葉じゃないのかな~~と。心の奥の奥で求めていた真実はこういうことじゃなかったのかな~と思ったんですよね~~

そのミミナシを愛していた沖元准@大東俊介君、楽しんごですよね~~今流行のおねえキャラを見事に演じていました。正直、最初の頃はウザッ

と思ったんですけどね~~2幕であんなに泣かされるとは思わなかったです



伊東絵美@松本まりかさん、浮気の決定的証拠の岩塩(原作ではハンカチ。どーして岩塩だったんだろう?

)をミミナシに渡すことで悪事の片棒を担いでしまう役……のはずが沖元准に持っていかれてしまって存在感が薄れてしまっていましたが、純粋バカなモナとは対照的に世渡りも男渡りも知り尽くした女性、もしモナがその1%でも“知恵”があったなら……そういう意味では絵美という役の存在意義はあったのかもしれないですね~~男に対して「あかん」という言葉がセリフに使われていたのは良い選び方だと思いました。ただ否定するだけじゃない、言葉では表せない丸みというのかな~~そういうのが出る言葉だと思うので。こういう姉さん、かっこかわいくてじい的には嫌いじゃないでっす。モナへの好意をミミナシに利用された三ノ宮瓦@粟根まことさんは被り物担当

あらゆるものに化けて(被って?)執拗に出没しているところが笑えた~~2幕では被り物のままソファに座ったら起き上がれなくなってミミナシに起こしてもらってるし~~お疲れ様でした
汐見秀樹@伊礼彼方君、、、すまん!伊礼君に全く責任はなくて完全にじいの好みの問題なんだけど、カッコイイところが逐一ムカついた~~



それを狙った演出もあったんだと思うけど、投げキッスとか、外国語を喋らせるところとか、かっちょいい振り付けを見せるところとか、、、多分好みのタイプだったら萌えること確実だけど好みじゃないだけにいちいち癇に触れるしプリンス的な役回りにイラッとするしダメンズなところも欠点にしか見えないし……とにかく苛々



やはりミュージカルの人ということで歌の見せ場がありましたね~~歌い方もミューな感じでちょいと浮いてた感があったけど、正統派のかっちょいい役より、こういう弾けた役の方がいいかも~と思いました←それでもムカつき度は変わらないけど(苦笑)