~あらすじ~
舞台は現代の広島の牡蠣工場。
周囲に合わせることをまったくしないシングルマザーのパートタイマー山本(天海祐希)に、シフト担当の木村(鈴木亮平)は、手を焼いていた。
ある日木村が目覚めると、そこはワンマンな町長(仲村トオル)が牛耳る西部の町「ヒロシマ」だった!
山本は、子連れガンマンの「ジャンゴ」として現れ、木村はなぜかジャンゴの愛馬「ディカプリオ」として、わけもわからぬまま、ともにこの町の騒動に巻き込まれていく―――!(公式サイトより)
休憩含む2幕2時間50分。セット転換なし、現代の広島と西部の町ヒロシマの転換は演者や裏方が家具や小道具をセッティングしていました。下手側に階段があって2階の通路に上がれるようになっています。ここでのやり取りで牡蠣工場⇄西部の町が切り替わるのがわかりやすくて流れ的にも効果的になっていて……上手側奥には大きな井戸が聳え立ち、、、井戸=水というのがこの作品の大きな柱になっています。演出的にちょっと小劇場ちっくなところがあったり???でも全体的にまとまっていて作品の世界観を楽しめるようになっていたかなぁと
初演を含めて何も知らない状態での観劇。勝手にコメディかと思っていたら結構重い内容だったことに面食らってしまって 後で気づいたんだけどロビーに注意書き的なことが書かれていたんですね〜〜重めの気持ち悪さ、バイオレンスが苦手な人は予め読んでそういう腹づもりでいた方がいいかもしれません
冒頭からカープ!カープ!!カープ!!!(笑)牡蠣工場の従業員たちはカープのユニフォーム着てるし~~ 背番号だけで誰のユニか分かってしまう辺り笑ってしまいましたが……18番が森下ではなくマエケンで15番の黒田が同時に在籍なら2015年設定、でも新井が25番になっているということは2016年設定か?!(爆!)44番が松山、55番がエルちゃんで7番は堂林~と舞台を観に来たのに何見てんだかのじい(苦笑)その上まさか観劇に来たのに応援歌の「それゆけカープ」を1番まるっと劇場で聞こうとは!思わず立ち上がって 「高く~」と合いの手を入れそうになりました。気分はすっかり7回ラッキーセブンの攻撃前 でもまさかこっちまで出てきたとはね~~「空の青さに生き生きと~跳ねて暴れる~こいのぼり♪」と歌いながらキャストたちが退場していく場面があったんだけど、客席内に何の曲か認識できた人がいたら確実に“お仲間”さんだと思われ……(笑)この後しばらく頭の中で「あれがカープのファイトだよ~緑輝くグランドに~」と続きが流れてしまったんですよね~~どう責任を取ってくれるのか(爆!)
ワンマン工場長は熱狂的なカープファンということで休みの度に懇親会という名のカープ賞賛会?!的なものへの参加を強要。自由参加と言っておきながらも実際はボーナス査定に響くというパワハラ体質の職場という。新入りパートの山本さんは会に不参加&東京から来たというだけで勝手に巨人ファン扱い。ここら辺りの設定、、、もちろん実際にはないだろうけど冗談のネタとしては広島あるある、カープファンにあらずんば広島人にあらず的な……近隣の?鷹さんや虎さんのファンとは仲良くできても讀賣ファンの人権はゼロに等しいと思われ……。悪役側の工場長に14番・津田のユニフォームを着せたのはちょっとマズくないか?と思うところあり。しかもブラック企業の理念を正当化するために「弱気は最大の敵」という津田の座右の銘にこじつけたのはさすがにちょっと 聖域の存在である工場長と重ね合わせることに意味はあったのかもしれませんが、津田に対するカープファンの気持ちというのは気軽に語れるものではないのでね。。。あと、2幕での応援歌の使われ方 水を独り占めして民衆から税金を巻き上げている悪徳町長に反旗を翻す時に団結の象徴として歌われるのは良しとして(レミゼの民衆の歌かいっ!と突っ込んだけど)脅されたり圧力をかけられたり懐柔されたりして町長側に寝返る時に崇拝の歌として使われたり、天海さん演じるジャンゴを集団リンチする時に殴ったりバットで叩いたりしながら歌うのは聞いていてトラウマになるというよりは何か不快な気分にさせられてしまうところがあってね。。。広島の演劇人が関わっているから許容できるし行間も含めた思いは推察できるから全然あり! と思えるけど、これが広島に縁も所縁もない讀賣ファンなんぞの作家が書いていたら私刑対象だろうなぁ~←作品から何も学んでいない発言(苦笑)
山本さんを懇親会に参加させて社畜にさせようとする工場長、自分たちのボーナスに影響が出ないように同調圧力をかける従業員たち、その狭間で悩みながらも事なかれ主義で通り過ぎたいシフト担当の木村。木村が家でシフト作成に頭を悩ませていると横から女性が話しかけてくる。帰宅している状況だから木村の妻?共働きで帰ってきたところ??それにしてはスーツ姿にパンプス、首からIDカードをぶら下げているバリバリ仕事中の姿って変じゃない???と思っていたんだけど2幕で真相が判明。実は彼女は木村のお姉さんでブラック企業で働いていて自殺していたという 木村はシフト作りからの飲酒から寝落ちしてしまうんだけど、そこで見た夢=架空の西部の町ヒロシマになっていて現実の牡蠣工場で繰り広げられているのと同じような状況になっている。水を独占して民衆から税金を巻き上げている悪徳町長、息子、その取り巻き。本心は違うのに自分の生活の為に従っている民衆。そこにやってくるのがお尋ね者のジャンゴとその娘……と馬!鈴木さん、体を張って頑張ってたわ~~ やり放題やられ放題(笑)何かする/される度に客席から笑いが起きていて、場面によっては相応しくないのでは?という意見もあるようですが、じいは逆に等身大の存在感で救いにもなっていたのではないかと感じました。重い場面に敢えて空気読めない感……一服の清涼剤であり一番観る者が共感しやすい存在なのかなと。それに馬の目を通して見るものって物凄~~く説得力があると思ったなぁ
西部の町で繰り広げられる話、結構エグイ展開でね~~自前で井戸を掘って町長に抵抗しようとしたチャーリーを叩き潰し脅して自分の手下にして、敢えて民衆を痛めつける矢面に立たせるような仕事をさせる。町長が高額で売る水にカープ印が付いているのはイラっとしたな~~どうせならジャビット印にすれば良かったのに!チャーリーの妻で元教師のマリアは生活の為に娼婦に身を落とし、娘は将来に絶望し町長の息子に暴行されそうになる……典型的なヤクザ物の展開、もしくは必殺シリーズかっ!と突っ込みたくなってしまう流れ。更にはジャンゴが懸賞をかけられている真相、、、途中からサスペンスとかにありがちなアレかな~と思ったらまさにその通りで 夫殺しの真相は父親殺しで母親が娘の身代わりになっていたという。一度は町長と徹底抗戦する構えだった民衆は自分可愛さに裏切り最後まで戦おうとする者を集団で嬲り殺しにし、自分のせいで処刑されようとしている友達の為に真実を話そうとする娘を黙らせ黙殺させようとする母親、、、正直観ていてしんどかったです 誰もが正義であり悪でもあるんですよね~~誰一人責めることはできない。明らかに悪人の町長でさえも……目の前の利益でしか評価できない民衆は愚か、まともな家庭を築けない毒親の再生産、、、その言い分には一理あると思ったし。まぁ町の為に井戸掘りで犠牲になった人と遺族の為にお金を渡していると言いながら水を独占するために町の上流に巨石を置いてヒロシマの町を干上がらせたのは町長だから、マジこいつ悪っっっいなぁ~だったんだけど。第三者の犠牲に乗っかって自身の主張する強権的な政策を正当化する政治屋、、、日本にもいますね。
夢の終盤、木村姉弟の語らいは泣きました 二人の出す言葉の空気感と存在感が物凄~~くリアリティがあって迫ってくるものがありました。ブラック企業で追いつめられての自殺、、、どうして逃げなかったのか?普通に考えれば至極正論なんだけど、判断能力どころか考えることそのものができなくなるんだろうなぁ~と思ったり……でも残された者の言葉も悲しいですよね。どうして気づいてあげられなかったんだろう、助けてあげられなかったんだろうの自責、、、それが何故死んだのか?家族のことを考えなかったのか?どうして言ってくれなかったのか?の他責に移り変わっていき、その間で動けなくなってしまうなんて……。西部の町の夢はお姉さんが見せたって木村は言っていたけど、西部の町の話の結末は勧善懲悪のハッピーエンド 木村が大好きな西部劇と同じ結末。でも夢から醒めた現実はハッピーエンドではなくて……最後は何も変わらない状況、しかも木村と山本は解雇されることになるという最初より悪い状況 でも2人の静かな語らいは何だか温かくて 何か清々しい風が抜けていくようなラストシーンでした。木村の成長・再生物語でもあったのかな~と思ったり。。。
セリフは全て広島弁(東京から来た設定の人物を除く)。いつの時代/どの世代の喋りを設定したのかなぁ?というごっちゃな言い回し(「~してつかあさい」とか時代劇並みだと思うけど?!)に翻弄されるところはあったけどエンタメ性を高めた作品としたら分かりやすいイメージとして敢えて使ったということもあるのかな?東京から来た山本さんの言う「本通り」のイントネーションを変えてきたのは唸らされましたね~~GJ 1幕最初はいかにも喋ってます!な感じに聞こえていたけど、耳が慣れたのか、あるいは物語が進むごとにキャスト陣のテンションに引きずられたのか、すっかりその世界に入り込んでいました。1フレーズ程度ならどのキャストも全然違和感がなくて寧ろ上手だなぁと思えたほど ただやっぱりフレーズが長くなったり感情の起伏がある場面になると気になる部分が多くなり……イントネーションや相槌に関西弁が入ってくる。西の言葉って外から聞くとそういう風なイメージで聞こえるのかなぁ???セリフに込められる気持ちもどこか他人事のように聞こえてしまうこともあって……天海さんの喋り(東京から来た設定の役だから標準語)と同時に聞くと如実に現れるんだけど、普段使っている言葉だと普通に感情が言葉に乗るからセリフに込められた役の気持ちが伝わってくるんですよね。片や方言=外国語みたいなものだから本当に自分自身の感情を入れようと思うと大変なんだろうなと思うところがあってね。。。言葉を使うって本当に難しいものだなぁと改めて思ったわけですが……1人だけ全く崩れず上手いと思ったら広島弁ネイティブの人だったのね 鈴木亮平さんと土居志央梨さんの喋りも良かったですね~~土居さんの語り、普通に広島の人が喋っているのを聞いている感覚でした。鈴木さんは大学で語学専攻だったし言葉の感覚や耳が冴えているのかなと思ったり……個人的な事情で素の喋り方は好きじゃないんだけど(爆!)今回は言葉の空気感が出ているのが感じられて凄いな~と思いました。まぁ全体的に良かったんじゃないかなぁと思います(なぜか上から目線・笑)。とても上手で広島にいる感覚になりました
ただ気になったこともあって……甚だしく激しい言い合い、脅し、暴行の場面で広島弁が使われるとヤクザ映画にしか見えてこないんですよね 酒場での乱闘場面や銃撃戦も西部劇の世界で展開されているとは思えなくて、どう見ても流川界隈で繰り広げられている抗争や騒ぎにしか見えなくて……ゴメンナサイ あと、、7つの川をせき止めるための巨石を置くとしたら高瀬堰辺り?市内で自殺が可能な橋って?とか妙にリアルな想像をしてしまって違う思考が働いてしまって……でもアレコレ匙加減するのが面白くて内容も楽しめたので良かった~♪