日常

「エル・グレコ展」

2013-03-03 20:43:27 | 芸術
東京都美術館で開催中の「エル・グレコ展」に行って来ました。


エルグレコは宗教画が多いので、キリスト教のことが分かっているとさらに深く分かります。ちゃんと勉強しようと改めて思いました。
西洋の美の歴史は、キリスト教とギリシア神話の理解は必須のようですね。


自分は受胎告知の絵が好きです。エルグレコ以外にも名だたる画家がこのテーマにInspiration(霊感)を受けているのがよくわかる。

受胎告知は、マリアにキリストの聖霊が受胎した時の瞬間を描いている。
自分は、「キリスト」という存在を、実在の人物であると同時に、だれしもが持つ「神聖なる神性」のシンボルであるとも思っています。


僕らは、誰もが神性(キリスト)を持つ。
人間は、人生の中で必ず神性(キリスト)に対する迫害や受難を受ける。
人生は「思い通りにならない」受難の旅そのものともいえる。
ただ、だからこそ、僕らは内に秘めた神性(キリスト)と対話する機会を与えられる、とも言える。

人生生きていると、僕らの聖なる神性(キリスト)が磔にされ殺されようとする場面に必ず出くわす。
ただ、それぞれの内なる神性がなくなることはない。
聖書では、シンボリックに3日間という日にちが出てきて、3日間我慢すれば、聖なる神性(キリスト)は奇跡のように復活(再生)する。
その3日間が3年くらいかかる人も30年かかる人もいるかもしれないけれど、聖書では、キリスト(神性)は必ず一度復活する、と書かれているのは示唆的だと思うのです。

だからこそ、誰もが神性(キリスト)を大切に守り続ける必要があるのでしょう。
聖書は、人類の原始的な心の動きそのもののメタファーのように読めます。
たしか、このことを最初に指摘したのは神秘家スウェーデンボルグだったと思う。
改めてスウェーデンボルグの神学を復習してみようかと思った。
→スウェーデンボルグは、田口ランディさんの「アルカナシカ」(2011-07-03)にも少し出てくる。


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キャンベル『神話の力』 p113
あらゆる宗教はなんらかの意味で真実です。隠喩(metaphor)として理解した場合には真実なのです。
ところが、それ自体の隠喩にこだわりすぎて、隠喩を事実と解釈してしまうと動きが取れなくなってしまいます。
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エルグレコの絵を見ていて感じたのは、彼の内的なVision(幻視)というのは、ひとつのリアルな現実だったのだろうという事。

僕らは、夢の世界や無意識の世界を、非現実的で空想的なものとして主観的で個人的なものとして排除する傾向にある。
ただ、彼ら芸術家が形や色を追求した果てに見ている内的世界のVision(幻視)は、当時は極めて重要な重なり合った現実であった、ということを感じました。


エルグレコの視覚には、聖霊やマリアやキリストが、疑いようもなく明確に見えていた(Vision)のだと思う。そのことを強く感じました。


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キャンベル『神話の力』 P121
通常、人々は物事を日常的な現実の目で見ますが、どんなものでも、神秘をたたえたものとして考えることができるのです。
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キャンベル『神話の力』 P87
天国も地獄も私たちの内にありますし、あらゆる神々も私たちの内に生きています。
これは紀元前9世紀のインドの『ウパニシャッド(奥義書)』が達成した偉大な覚知です。
あらゆる神、あらゆる天国、あらゆる世界はわれわれの内面にある。それらは拡大された夢であり、夢は葛藤している様々な肉体エネルギーがイメージの形で表れたものだ。それが神話の正体です。
神話というのは、肉体器官の互いに衝突し合っているエネルギーが象徴的イメージ、隠喩的イメージの形で顕現したものです。
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僕らは神社や聖地にいくと、否応なしに厳かで神性な心境になります。
それは、場そのものの時間と空間がねじれるようなもの。

エルグレコの絵画も場を変容する力がある。
彼の絵の前に立つと、荘厳で厳かな意識状態へと、意識の変容を促される。
そうして、もう一つの現実世界を体験させられるのです。






エルグレコの絵画は素晴らしかったです。素晴らしすぎて、度肝抜かれました。
以前、倉敷の大原美術館でエルグレコの絵を見た時も感動したけれど、今回のように大規模でされているのは珍しい。
「大原美術館」(2011-08-07)


ご近所の国立博物館でなされている円空展と同じく、エルグレコ展も大のお薦めです! しかも、今は国立西洋美術館ではラファエロ展まで始まっているというすごさ。。。
「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」(2013-02-10)




今回の展覧会で配っていたチラシに、その他の展覧会で色々興味深いものが!!


○「深海」 国立科学博物館 2013/7/6-10/6


○「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 天才の肖像」 東京都美術館 2013/4/23-6/30


○「ターナー展」 東京都美術館 2013/10/8-12/18


○「夏目漱石の美術世界展」東京藝術大学大学美術館 2013/5/14-7/7


○「プーシキン美術館展」 横浜美術館 2013/7/6-9/16


○「ラファエロ展」 国立西洋美術館 2013/3/2-6/2



こういうのにすぐ行けるのは、東京にいてよかったなーと思います。
というか、元々東京に出てきた大きな理由は、こういう本物の絵が見れるから、っていうのは大きかったのを思い出します。



どんなに仕事が辛かろうと、何があろうと、「美」という独立したイデア世界が実在していることを強く信じることさえできれば、どんなことでも乗り越えることができるような気がしています。