日常

サントリー美術館『夢に挑む コレクションの軌跡展』

2011-04-19 19:31:36 | 芸術
やっと時間ができて、国立新美術館の『シュルレアリスム展』に行き、すぐご近所のサントリー美術館の『夢に挑む コレクションの軌跡展』をはしごして見てきた。


『シュルレアリスム展』は、人間の脳の中へと、さらにその無意識の中へと入り込んでいった世界。
サントリー美術館での世界は、脳を消して自然の中へと、内界と外界の境界を消して美のイデアの中へと入り込んでいった世界だと感じた。
ふたつを並べてみただけに、とても対照的だと思った。




フロイトやユングが無意識へと光を当てた。
ただ、仏教は唯識という思想でそのずっと前から無意識を考えている。(あらためて、仏教は科学哲学のようなものだと驚く。)


そんな無意識の世界。
絵画の世界も肖像画や風景画を経ながら、人間の無意識の世界へ、その根底にあるイメージの世界へと興味関心を広げていった。
その果てにある抽象画やシュールレアリスムという絵画は、自分はとても好きだ。
人間という存在の幅の広さを感じるし、この世界の無限のひろさのようなものを感じるからだ。



ただ、あまり脳の無意識の世界を果てしなく追及してもキリがないとも思う。
外の世界は脳に投射された映像に過ぎないという理解が、外の世界を単なる幻に過ぎないとなって、ついには他者や自分以外には関心がなくなってしまい、自分さえ楽しくて悟ればいいじゃないかっていう奇妙な独我論のようなものに連結していくような気がする。それは、きっと麻薬とかの世界につながる。
だから、自分の脳や無意識を探求するのも大事だけど、そこにとらわれすぎてもいけない。



シュールレアリスムの絵画を見た後に、日本の自然の美を素朴に描く世界を見た。
だからこそ、その強いコントラストに余計に心を動かされた。

あらためて、こういう素朴な日本の美の流れを途絶えさせてはいけないですね。 


そして、美意識の世界は、基本的に「調和」の世界なんだなとも思った。 
美意識がないとそこに調和はなく、調和がないとそこに美はない。 

どんなに混沌としていても、美があれば、そこにはある種の調和がある。
調和と言っても、単にきれいに整列しているとか、対称的(シンメトリー)とか、そういうものではなくて。


さらに言えば、人間と言う存在が生きているという事自体が、調和の基本になる場所だと思う。
病気があろうと、自分の中に負でマイナスの感情があろうと、・・・全部ふくめてそこには調和がある。だから、60兆個の細胞が同時に連動してひとつの個体を動かす事ができる。




岡潔「春宵十話」
『数学の目標は真(マコト)の中における調和であり、芸術の目標は美の中における調和である。』
むかし、「調和」(2010-09-21)っていうブログを書いた時に冒頭に引用した。


調和があると、そこには生命(いのち)と呼ばれる場のようなものが生まれるのだろう。
生命そのものが、調和を表現しているのだと思う。




ところで、サントリー美術館の『夢に挑む コレクションの軌跡展』の構成は以下の通り。
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序章:コレクション誕生―ゼロからのスタート
第1章:漆工―暮らしに寄り添う器たち
第2章:日本のガラス 朝倉コレクションを中心に―世界に誇るガラスコレクション
第3章:屏風と御伽草子―暮らしを彩った絵画
第4章:陶磁器の世界― 彩り豊かな皿や器たち
第5章:染織とファッション―小袖・能装束と沖縄の紅型
第6章:ガレと世紀末のガラス―光と色のジャポニスム
第7章:琳派と茶道具―取り合わせの美
第8章:新収蔵品初公開―雪舟から若冲まで
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サントリー美術館の所蔵作品のベストのようなものなので、とてもよかった。
ゼロから始めて、よくぞここまで集めたもんだと思った。


そして、サントリー美術館自体が僕はすごく好きなのです。
あの清潔なフローリングもふくめて、とても清々しい気持ちになれるから。



今回の展覧会はサントリー美術館の開館50周年記念ということで、「美を結ぶ。美をひらく。」というシリーズとして、
・「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」(2011年6月8日(水)~7月24日(日)
・「コーニング・ガラス美術館特別出品 あこがれのヴェネチアン・グラス―時を超え、海を越えて」(2011年8月10日(水)~10月10日(月・祝))
・「南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎に迫る」(2011年10月26日(水)~12月4日(日))

というのが連続して企画されてるみたい。
今回の展覧会を見たら、上のどれでもタダで入れますよって言う招待券ももらえてお得だったー。
(なんか展覧会と無関係な内容が多かった。ダラダラ書いてすみません。)