日常

鉄―137億年の宇宙誌

2009-08-10 00:05:15 | 芸術
『鉄―137億年の宇宙誌』展というのが、東京大学総合研究博物館(東大本郷キャンパスの端っこにある)でやっている。


これ、見てきたけどかなり面白い!!
しかも無料だし。

鉄を切り口に、宇宙誕生の137億年前から現代、そして未来の鉄利用まで壮大な宇宙史・人類史を描いている。すごく丁寧に詳細に妥協なく調べていて、主催者の愛情や情熱がほとばしって伝わってくる。


鉄によって機械による効率化と電気文明の発展があり、鉄があったから人類の産業革命は起きた。
古代でも、鉄によって青銅器より強力な武器ができることもあり、鉄をいかに作るかが国の存続と直結していた。
人類の歴史は鉄の発見と共にある。

この辺は、『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド(草思社)っていう有名な本もありますよね。




医学的にも、鉄は大事な役割を持つ。
体内のヘモグロビン(血液が赤く見える原因)は鉄を中心とした構造でできていて、そのヘモグロビンが体内で酸素を運ぶ役割をする。
つまり、鉄やヘモグロビンがなければ、人間はすぐに死んでしまう。
脳なんて、酸素がなければせいぜい5分程度で脳死になってしまうんですから!

人だけではなくて、生命全般においても、呼吸、光合成、DNA合成、窒素固定・・・鉄が果たす役割は大きい。生命体と鉄とは切っても切り離せない。



宇宙レベルでは、地球は水の惑星と言われるけれど、実は地球の重さの3分の1を占めているのは鉄らしい!
地球内部には鉄があってそこで磁場ができる。
その磁場が地球表層にあることで、宇宙線が地球に降り注がないように地球を守る働きをしているらしい。

こんな感じで、他にも鉄での切り口がいっぱいあって、すごく知的興味を刺激してくれた!
こういうのがいい展示なんだろうねー。そこだけで閉じてなくて、自分の知的刺激に火をつけてくれるっていう意味でね。


この展覧会に即した本も、『鉄学137億年の宇宙誌』宮本英昭(岩波科学ライブラリー 161)として出版されるみたいなので、読んでみたいなー。


あと、常設展示『キュラトリアル・グラフィティ~学術標本の表現』展ってのもやっていて、縄文人とかの骨をとにかく展示してある。
これも、「なんだかんだ言って、現代人も縄文人も骨になれば同じだし、人間なんてみんな同じなんだなー」って改めて思います。


展示は10/31までやっているし、入場無料ですよ。
すごく面白いし、かなりお得!
近所なので、またもう一回見に行こうかなぁ。

2 コメント

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面白そう (la strada)
2009-08-10 01:08:25
面白そうですねー。
機会があったら行ってみよう。
展覧会とか色々行ってみて思うけれど、
いかにその空間で素材の力をうまく引き出して、人を楽しませるか、びっくりさせるかというのは、やはり、自意識過剰では見えてこないですよね。

今日はみなさんとお別れしてから、「骨」展に行ってきました。
http://www.2121designsight.jp/bones/about.html
予想以上に面白かった!!!
まさに部分と全体を考えさせられたし、コンセプトやアイディアが、斬新で、カッコよかった。

例えば、この、紙とデジタルの融合に感動。
(このページだけではよさは伝わらないけど)
http://www.2121designsight.jp/bones/work_15.html

色々な作品で、機械と生き物の「間」、アナログとデジタルの「間」を感じて、右脳を刺激されました。デジタル化、機械化は、よくないものと、ざっくり考えていたけれど、可能性の広がりを感じたなぁ。

それにしても、東京というところは、そして、日本人の感性というのはすごいなぁとあらためて感じます。感度がすごい。 そして、日本画のよさに、まっきーとため息でした・・・。あの絶妙の淡い色とか。ああいう色は、なかなかないよなぁ。
ゴーギャン展より、常設展の方が、100倍くらいよかった。笑。
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もろもろ (いなば)
2009-08-10 15:40:25
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la strada様
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知的刺激に満ちてて、かなり面白いよー!
星の誕生の歴史から、人類と鉄のかかわりとか。

きっと、いろんな切り口で無限に物事って切ることができて、そういういろんな断面を知った上で、それを頭の中で同時に重ね合わせながら考えるっていうのが、全体を理解するってことなんでしょうね。
それは、どんどん深めていく行為で、人生何十年かけても深めることができる。

宇宙、生命、人類の歴史を、鉄でも骨でもアワイでもこころでもからだでも・・・・どの言葉や概念で切ってもすごく面白い!


展覧会って、そのとおりで自意識過剰な展示ってつまらないのよね。
その自意識で、素材をねじまげて展示しちゃう。ねじまがった展示は、なんとなくの違和感を感じさせるんだけど、その違和感が微妙なときは、何が違和感なのかわからないまま見終わるし、そうなるといまいち面白くなかったなーって感じで終わってしまうものですな。

ここは、やはり自己と他者論とか、表現とか、芸術とか、その辺にも通じる話です。奥が深い!



「骨」展、トークイベント見ると、7/1に養老先生のトークもあったんだねー。聞きたかったなぁ。いつか会いたいなぁ。

骨って、『骨格』と言うだけあって、全ての基礎にあるんだけど、普通はその上を覆うもので目に見えないものになる。
だから、そんな目に見えないものを見ようとする姿勢がないと、『骨』ってすぐに無意識の層に押しやってしまうよね。人間の骨なんていうのも、その典型!
骨折して初めてその存在に気づく。みたいな。



機械と生き物の「間」、アナログとデジタルの「間」。
あ、これはわしが最近気になっている『あいだ』って概念だー。

木村敏『あいだ』(ちくま学芸文庫)も、刺激的な本だったなぁ。
そういえば、8割まで読んでて、まだ完読してないことにきづいた。



東京って、ほんとすごいよね。
熊本にいたとき、なんとなくの憧れで東京を見ていたけど、30歳くらいになって、東京の懐の深さをマザマザと感じます。
琵琶法師の映画も、あんなに人が見に来る!ってのが驚きだし、上野の美術展もすごい人手だしね。
最近は東京を堪能しているし、そこを一緒に堪能してくれる友がいるっていうのも、かけがえのない貴重なことです。いつも、みなさんありがとうございます。



日本画、まさしく『アワイ』の世界だよねー。(しつこい?笑)
絶妙な色の世界。無限性と有限性のアイダ!
はー(ため息)。

ゴーギャン展より、常設展の方がよかったでしょ!!

俺も、そのこと『東京国立近代美術館(2009-07-07)』で書いているのよねー笑

みなさまも、是非皇居や神保町近くにある、 東京国立近代美術館に是非言ってみて下さい。隠れた日本の宝がいっぱいありますよー。
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