観測にまつわる問題

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創られる「民意」

2011-09-27 23:41:32 | 政策関連メモ
「脱原発」が98% 原子力委への国民意見(MSN産経ニュース 2011.9.27 11:42)

>国の原子力委員会(近藤駿介委員長)は27日、東京電力福島第1原発事故で中断していた「原子力政策大綱」の見直しを議論する策定会議を半年ぶりに開き、東京電力福島第1原発事故後、同委に国民から寄せられた意見のうち98%が「脱原発」に賛成する意見だったことを明らかにした。

あたかも国民の98%が脱原発であるかのような見出しだが、ちょっと待って欲しい。世論調査と全然違う。

しかし、脱原発運動家は頑張るね・・・。こうして「民意」が創られるのだろう。そこで自分も頑張ってみた。以下、原子力委員会に送られることがほとんどないらしい脱原発でない国民の意見(同じものは既に原子力委員会ホームページから送った)。有志のみなさんもどうだろう。脱原発でない意見こそが貴重である。

>ご意見の概要(100字以内)

>原発は安全性が確認されたものから、順次再稼動させるべき。古くて比較的安全でない原発があって、対策にコストがかかるなら、廃炉も止むを得ないが、安全性の高い新規原発の設置も地元の要求に応じ行なうべきだ。

>ご意見及びその理由(800字以内)

>①脱原発は非現実的。再生可能エネルギーは高コストが明白。財政危機・少子高齢化が深刻で東日本大震災で痛手を被った日本が大規模に導入できる余裕はない。お天気まかせで、需給を一致させることが難しい点も非現実的と言える。火力を増やすと化石燃料高を招くという構造的問題がある。実際問題、緑の党など反原発運動の影響濃い欧州でも脱原発に成功した試しがない。
②脱原発は高コスト。今、火力が原発の穴を埋めているが、燃料費が兆単位でかかるらしい。原発のバックエンドコストに比べても燃料費は高すぎる(日本エネルギー研究所8月31日「【大地震・エネルギー政策見直し関連情報】有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価」参照)。また、火力は大量に廃棄物(CO2・亜酸化窒素・ヒ素)を出しており、環境意識の高まりと共に、今後劇的にバックエンドコストがかがる可能性が高い。新興国の発展による資源高も現実的なコストアップ要因だ。原発の初期コストは高く、建設済みの原発を稼動させないのは不経済極まりない。
③原発はエネルギー安全保障に寄与する。火力(化石燃料依存)は資源の少ない日本の国益に合致しない。高速増殖炉は世界各国で研究が進められており、原発は劇的に日本のエネルギー安全保障を向上させる可能性が高い。脱原発で技術を切らせば、後で元に戻せる見込みもない。
④冷静な政策検討そのものが日本の国益。放射能の恐怖は明らかに誇張され、風評被害の損害は測り知れない。対策としては、冷静な政策検討しかない。安全対策が不十分だったから事故は起きた(今度の大地震でも女川・福島第二は問題なかった)のであり、原発に正面から向き合い安全性は安全性として冷静に検討する姿勢は、原発のみならず、日本の安全を高める姿勢だと言える。不安だから廃止と安直に煽る姿勢と決別するべきだ。逃げは解決にならず、政策は原発だけではない。

次期戦闘機の評価結果公表

2011-09-27 23:18:11 | 政策関連メモ
次期戦闘機選定「評価結果公開したほうがいい」 防衛相(MSN産経ニュース 2011.9.27 10:47)

>一川保夫防衛相は27日の記者会見で、欧米の3機種が応募した航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の選定後、各機種の評価結果公表に前向きな考えを示した。「防衛装備品は相当高価で、国民から疑念を持たれないような形で決める必要がある。公開できない部分もあると思うが、可能な部分があれば公開した方がいい」と述べた。

公開できない機密情報が多いと思うが、どういう判断を下したか公開することに意義はあると思う。いい意見は素直に評価したい。言って撤回するのが民主党流、なんてことがなければいいが。

F35なら、開発の遅れ(どんなにいい機体でも配備されなければ意味がない)と高コスト(財政は厳しい)と日本の技術力アップに繋がらない点を説明する必要があるだろう。ユーロファイターが最も日本の技術力アップに繋がるとされ、アメリカの最も重要な同盟国イギリスも経団連に売り込みに来る(駐日英国大使館 14 7月 2011 「英国のキャメロン首相が経団連の代表団と懇談」)など、これは現実的な選択肢と言える。

ここでアメリカ以外の選択肢を真摯に検討できなければ、何時検討できるのだろう?ケツに火がついてキレかけ寸前の時にヤケクソで検討するというのだろうか。アメリカは神様ではなく、日米関係は重要ではあるが、アメリカが全部正しいわけではない。アメリカが日本の国益を損ねることもあるだろう。欧米では個人が力をつけて組織を天秤にかけることを当然視しており、アメリカとてこうした(米機と英(欧)機を天秤にかけて英機を選ぶような)合理的な考えに対し必ずしも絶対反対するようなことはないと思う。寧ろどんなに不利でも対米一辺倒だとそのことを訝しく思うのではないだろうか。

復興と漁業

2011-09-27 23:05:16 | 政策関連メモ
「日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる」(勝川俊雄著/NHK出版新書/2011.9.8)という本が結構面白い。

この本の主張の核心は日本の漁業は乱獲の状態にあり、日本の早い者勝ち方式(オリンピック制度)に代え、個別漁業枠(IQ)制度を導入することにより、漁業資源を回復して、儲かる漁業に変えるということにある。

自分も以前より漁業資源の持続的利用可能(魚が獲り尽されれば漁業にならない。典型的な「市場の失敗」が起こり易い分野と言える)の視点はあって、時折発言もしているが、ノルウェーの事例を引いて、漁業は儲かるのだ、衰退産業ではないのだとの専門家の意見が価値ある一冊だと思った次第。

ただ、6章の「水産物の放射能汚染について最低限知っておきたいこと」はあまり評価しない。比較的客観的に書かれている(いろいろな立場を紹介している)方だとは思うが、それでもまだ放射能の影響を過大評価していると思うからだ。

もう散々書いてきたことなのでここで詳述しないが、原爆で100ミリシーベルトの影響が検出されないのだから、ICRPの緊急時の20ミリ~100ミリシーベルト、平常時の1ミリシーベルト以下という基準(国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れに係る審議状況について -中間報告- 平成22年1月 放射線審議会 基本部会)は厳しすぎるだろう。人間は自然放射線とともに生きてきたのであり、内部被曝も例外ではない(放射性物質を含むがカリウムは健康にいい)。人間は放射線に耐えるように出来ており、ならば、論理的に言って同じ量なら一瞬の被曝の方が対応しきれず危険なはずだと考える(7000ミリシーベルト以上一瞬で浴びれば確実に死ぬと言われるが、100ミリシーベルトを毎年浴びるとどの程度危険だろう?わりと問題なく70年以上生きられるのではないか?)。

ともあれ、復興を考えるならビジョンが必要であり、儲かる漁業モデルがあるなら、参考にしない手はないはずだ。水産資源管理専門家の貴重な提言として、この本を捉えたい。