観測にまつわる問題

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広島×インバウンド

2018-12-29 15:27:08 | 日本地理観光
小原古邨 「安芸の宮島」パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

延び延びにして申し訳ありませんでしたが、ようやく広島×インバウンドを書くこととします。まぁ、自分で納得いく感じにならなかったのが、延期した主たる理由です。自分のポジション的に(安全保障よりの関心)広島の象徴とも言える原爆ドームをどう料理していいか全然分からなかったんですよね。最初は厳島神社とかその他あるしいいやと思っていたのですが。正直に書いておきますが、筆者ははだしのゲンのような漫画を何処か小馬鹿にするところがある子供でした(親が買ってきて家にあって、読むは読んでるけど、別に好きでないというか。ガチガチの左派の家庭とは思いませんが、筆者の子供の頃の愛媛(松山)は結構対岸の広島のテレビの方が映りが良いチャンネルもあって、広島の情報で育っている部分があるというか、広島ローカルのCMも知っていたりするところがあって、親にしてみればはだしのゲンのような漫画も買いやすいところがあったのでしょう)。そういうナチュラルボーンで何故か平和より(左より・リベラルより)の見方を吸収せずに育った筆者だということを踏まえて、原爆ドームを核とした広島のインバウンド記事を見ていただければ幸いです。

「世界が驚愕 外国人観光客を呼ぶ日本の勝ちパターン」(石井至 日経BP 2018/8)という本を書店で先日見かけて、ようやく広島のインバウンドを何となく分かったような気になれたというか、広島はどうも海外で(欧米人相手に)圧倒的な知名度があるようなんです。HIROSIMAは元々ワールドクラス。日本全体のインバウンドは85%がアジアからですが、広島は約半分が欧米人だそうです。この本では欧米豪は長期滞在が多いけど、財布の紐は意外と固いからアジアがいいよみたいな主張のようですが、実際のところ平日の稼働率が産業としての課題なんで、やはり長期滞在でしょという気もしますし、富裕層狙いだとか何とかいろいろ視点はあると思いますが、それはさておき、広島の観光としては欧米人に強いという強みを活かすしかありません(半分がアジアですからそちらも重要は当然)。

ただ、リピーターにならないとか、素通りが多い(関西や福岡に泊まる)という課題があるようです。対策としては泊まることが目的になる宿泊施設を建てるとか、泊まらざるを得ないイベントをするとかだそうですが、イベントは一過性ですから、やはり宿泊施設の方が重要だし、原爆ドームと宮島以外の観光地が鍵ではないかと筆者は思います。リピーターの方はサッパリですが、今度ディズニーにでも聞いて見るかな・・・(つては全然ないんですが、その辺の情報を何となく漁ってみます)。

本からの広島ネタは以上ですが、何故HIROSIMAが欧米人に知名度があるかと言えば、まずやはり原爆投下が世界史的な事件なんでしょうね。そういう意味ではNGASAKIもいけるような気がします。だとしたら、戦略としては、原子力と安全をテーマに徹底した情報発信をするという手があると思います。といっても、核廃絶運動をただ強調すればいいとは筆者は思いません。原爆投下は非常な惨禍ですが、人命が失われたという意味では、他に同等以上の惨禍は幾らもあります。特筆すべきは、原爆が戦争で使われたケースが広島と長崎しかないということだと思います。当事者の複雑な感情は否定しませんが、戦後30年経って生まれた筆者には、その辺はもうお互い様のように思えており、被害を強調するかのような発想は一歩引いて見ています。ともあれ、多大な原爆によって被害を受けた広島も長崎も、他の被災地(日本全国空襲(空爆)はされている)と同様といったら後遺症に苦しんでいる方に失礼かもしれませんが(空襲による後遺症の方もあまり目立たないにせよいるでしょう)、とにかく原爆ドームのような象徴的施設を除いて、見事に復旧・復興したと言えると思います。どのような方が特に広島に関心があるか筆者は知りませんが、そうした歴史に関心がやはりあるんだろうと思います。

その上で何を+αしていくかですが、例えば、原爆の投下が広島・長崎だけとしても、原爆実験はかつて世界中であって、福島の事故で放出された放射能より、中国の核実験で放出された放射能の方が巨大であったという事実があります。砂漠だからといって(地上で)ドンドンやって、風にのって日本にも飛んできたんですよね。単純比較は出来ないにせよ、明らかに適当に地上核実験していた頃が一番ヤバかったでしょうし(それでも甚大な影響があったようには思えません)、福島事故は二度と起こしてはならない惨禍であり、帰還できない地域の方にしてみれば1960年代も何もない訳ですが、徒に害を恐れることは意味がないと思う訳です。

測定データで見る「過去の出来事」(日本の環境放射能と放射線)
1960年代の放射能汚染と今回の汚染との比較 米・ソ・中国が原発実験を繰り返していた頃 熊井章のホームページ)

こうしたことが理解できるのが、実は広島人だったりはしないんでしょうか。まぁお隣でテレビは見ていたにせよ、広島に住んだことのない筆者には分からない話ではあるんですが。「75年間不毛説」とは一体(1945 原爆と中国新聞 <6> 報道と再びの災禍 ヒロシマ平和メディアセンター 中国新聞)? ペンペン草も生えなかったはずの広島ですが、その面影は原爆ドーム以外に見ることは出来ません。

日本は太平洋の国ですが、太平洋の国が核実験の舞台になったという事実もありますし、その関連でも欧米で特に関心が高いとも言えるのかもしれません(英米仏がオセアニアで核実験しています)。

まぁ核不拡散の重要性は勿論ですし(核戦争が起きたら地球が滅びます。核テロの危険性は言うまでもありません)、そうした角度からのものの見方を否定はしませんし、北朝鮮始め現在の国際的潮流は核不拡散の重要性を示しているとも思いますし、筆者も全くの北朝鮮核武装するな派でありそういう言動もしてきたと思いますが(北朝鮮が核武装してくれた方が対抗して核武装できるのような考えは特にありません。何故なら北朝鮮に核武装をさせるような言動そのものが日米同盟の根幹を揺るがし、核武装を遠のかせるというファクターもあるからです。ただ核武装なしで北朝鮮はまだしも中国と対峙ってどうなんだという思いもあります。トランプ大統領を筆者が良いと思うのは、中国に対する安全保障上の積極性が見られるところです)(元々核武装派でその困難性に気付いて言わなくなった経緯があります)(拉致問題の解決も米国の戦略と対立し日本の国益を守りつつ行うことは不可能だと思います)、とにかく反戦非核というような考え方に共感するようには必ずしも育っておらず、原爆ドーム的なムードに共感はまぁ正直ないんですが、広島の立場としては概ねそうなんだろうなという理解はしつつあります。

いずれにせよ、核と安全に関して記憶はあっても現状で少なくとも被災地はないと言える広島だからこそ、核と安全を考える役割が果たせるのかもしれません。現在進行形の被災地ではちょっと。少なくともその象徴は存在し皆関心があることは間違いないんだろうと思います。

厳島神社に関して言えば、やはり特異なビジュアルでしょうね。鳥居というのが原初に何を参考にしたにせよ(多様な説があって筆者にはこれというものは見当たらないような気がします)していないにせよ、日本で独自に発展したことは間違いないと言えますし、中でも厳島神社の鳥居は特徴的です。どうも島自体が御神体だったから、島に建てるのが畏れ多いということのようです(厳島神社はなぜ海の上にあるの?宮島観光スポット「厳島神社」の歴史と雑学 LATTE TRAVEL)。大神神社も山が御神体の磐座祭祀ですが(一帯に最初期の前方後円墳が存在し、大和朝廷=日本国の発祥の地と言えると思います)、(言語学上日本人の一派であることが明らかな)沖縄の御嶽(うたき)も「腰当森(くさてぃむい)」、「拝み山」等と言われるようで、そもそも原初の日本人の信仰は自然崇拝のアニミズムだったように思えてならず、厳島神社の宮島が御神体という発想は原初の形態を残しているように思えます。だからこそ価値があると言えるし、特異な形態を生み出したんでしょうね。(「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の構成資産の一つとして、世界文化遺産に登録された)宗像大社の沖ノ島も島全体が御神体で禁足地にもなっています。

ですから、厳島神社の観光を伸ばすというか価値を高めるひとつの方法としては、自然崇拝の視点を持つことが挙げられるかもしれませんし(そうしたことに関心が深い人が増えれば、他の神社等と共に厳島神社に訪れようとする人が増えるかもしれません)、神戸や博多や日宋貿易との絡みでも平清盛とか、愛媛の大三島神社に行って厳島神社の宝物館とか、 横山大観筆≪屈原≫と足立美術館(島根)とか、厳島神社であれば、ワールドクラス・全国区のポテンシャルって探せばいろいろありそうな気もする訳です。これからの観光は個人の嗜好にどうあわせていき、選ばれるかが重要になってくるのかもしれません。

他にも食なら牡蠣がありますよね。牡蠣好きの人は世界に多いとも考えられ、宿泊やリピーターを考える上で武器にもなるかもしれません。オイスターバーで検索すると、東京ばかりで地方のオイスターバーに目的地になるような店は少ないのかもしれませんが、せっかく地元が産地なんですから、広島ならでの郷土色等あったら面白いんじゃないかと思います。広島とレモン・塩で検索したら色々出てくる訳で、その他地元産の品を使えば、広島ならではのオイスターバーも有り得るんじゃないでしょうか。

西条の酒蔵も日本酒の地位が世界で確立したら、ワイナリーを訪れるワインツアーがあるように、インバウンドにおいても武器に成り得るのかもしれません。これでもうおつまみ選びに困らない!日本酒に合わせると相性抜群なおつまみを蔵元さんに聞いてみた!(KURAND)・・・チーズやアンチョビに合うなら海外需要も開拓できるのかもしれません。日本(広島)に来た時に、試してもらえれば次の可能性も?ただ、空輸だと大変そう。エジプトの米で日本酒つくって欧州で売るとか考えたけど、イスラム教国で酒は不味いか。どうもイタリア米でやってるみたいですね(イタリア米で造った日本酒をミラノ万博に参考出品。現地メディアの取材が数多く見込まれます。 ValuePress!)。クールジャパン戦略。

熊野筆で美容ツーリズムもありえるかと思いましたが、通常医療ツーリズムの一種で整形ツーリズムみたいですね。化粧品会社に対する観光旅行もないみたいですし、モノに対してマニアック過ぎるか。何かないかなとは思ってますが。

観光学に対する着目点

2018-12-29 13:20:26 | 日本地理観光
富士山冬3(フリー素材タウン)

観光学は全く触っていないのですが、個人的には主観的な意志・目的をベースとした分類に基づく分析が今の時代、重要なんじゃないかという気がしています。

例えば、食べるとか宿泊するとか行動別の分類や東京とか大阪とか地域別の分類ではなく(それも必要だと思いますが)、ディズニーランドに行きたいだとか温泉に行きたいだとか、最近はエコツーリズムやアグリツーリズム、インフラツーリズム、ジオツーリズムのようなものもあるかもしれませんが、何を見たいか何をしたいかという意志や目的を重視した分析が重要だと思う訳です。

その理由として、団体旅行から個人旅行の流れがあると思います。団体旅行だと団体割引でリーズナブルかもしれませんが、最大公約数的な観光になってしまうのが否めません。個人の趣向には違いがありますから、自分(達)なりのカスタマイズをするのが楽しい訳です。また少子化という構造要因を踏まえると、どこをどう考えても国内需要(マス)を狙った団体旅行は先細りにならざるを得ません。実際に団体旅行に依存してきた観光地は苦戦傾向にあると思います。

現代の基本的潮流に個人の趣向の細分化があります。日本も必ずしも例外だという訳ではありません。工場も多品種少量生産の傾向ですし、amazonのロングテールだとか、同人誌の興隆、コンビニなんかもスーパーで安いものをまとめがいのアンチ(利便性が高いのが魅力な訳です)と言えるかもしれませんし、ドンキホーテが栄えたりもします。

それはともかく、旅行業界でも個人旅行の傾向は顕著でそれはインバウンドにも言えることだと思います(インバウンドが団体旅行と無縁だとも言いませんが)。団体旅行の場合は個人の意志や目的はあまり関係ありません。これまでの業界は知ってか知らずか団体旅行向けにカスタマイズされている可能性があると思います。しかし、それはそれで良いとしても、それでは個人旅行(仲間内の少人数旅行)の潜在需要を捉えきれない可能性があるんじゃないでしょうか。個人や同じ趣味を持つ仲間の旅行に、特に興味がないものの入る余地はほぼありません。意志・目的が全てです。

温泉地を例にあげると、その温泉を目的に来たのか、(ビジネス等)何かのついでに温泉なのかで、随分様相は違ってくると考えられます。その温泉を目的に来た観光客が多ければ多いほど、強い温泉地だと分かると思います。いったん別目的の人を脇においておかないと、温泉地の正確な分析はできないはずです。強い温泉地を並べてみると、一定の傾向が伺えるかもしれません。その傾向を捉えて長所を伸ばしたり、短所をカバーすることを考える訳です。温泉地でのショッピングもついでなのか、ショッピング自体を楽しみにしてきたのかで違ってくると思います。宿泊所もその宿泊所を狙ってくるぐらいでないと価格競争の泥沼に突っ込んでしまうと考えられます。

地域・地方の立場でも、どの観光地が強いかは分かっているでしょうが、どの程度強くどの程度可能性があるのかに関しては、いったん旅行に関係ない人の流れを切って考えてみるべきなんだろうと思います。

まぁディズニーやUSJが強いに決まっているような気もしますし、あるいは免税店でのショッピングが強いような気もしますが、神社仏閣等文化施設も勿論人気はある訳で、そこに何故行くかということですよね。まぁ旅行自体が楽しみな可能性も多分にありそうですが、それを言っても始まらない訳です。

自動車博物館を最近調べていて、思ったより未整備な気がした訳です。地域の観光施設のひとつとしての博物館という位置づけから脱しきれてなく、全国どころか全世界対象に興味がある人を惹き付けるような博物館であれば、結果として地域にも貢献するのかなと。

後、インスタ映えというキーワードがありますが、だとしたら景観・写真映りが観光のひとつのキモとも言えると思います。元々観光という言葉は景色・風景・光景を観るという意味でしょう。だとしたら、ものになる景観とは何か、それを整えるためにはどうするかで、景観条例等を考えることができます(勿論コスト、費用対効果、防災等の視点もあわせて考えなければなりません)。

体験観光なら、どんな体験が何故受けるかです。遊園地なんかも一種の体験観光と言えるかもしれませんし、それは素直に五感に訴え楽しいんだろうと思います。

正確な分析で投資家が勝算を感じたならば、投資が進み経済が活性化するんだろうと思います。

祭りもいいんですが、産業としては一過性ですよね。どちらかと言えば地元の人のためにあるというか。宣伝効果や広告塔としては機能しそうですが、今の時代、それを核として地域を引っ張るまではいかないのかもしれません。

日本の象徴でもある富士山ですが、近頃では登らない観光も人気だとか(「登らない富士山」が実は玄人に人気!? 目指せ富士山マスター! YAMA HACK)。富士山観光に行って登らないのもどうかで登らないと楽しめないものも幾らもあるでしょうが、インスタ映え等を考え、美しい姿を楽しむという意味の観光であれば、登山を前提としない観光の整備もひとつの柱に成り得る訳です。具体的に各ボイントのアクセスを改善するとか。富士山百景写真コンテスト(富士山観光交流ビューロー)を見ると、様々な美しい景観のアピールはあると思いますが、例えば地図を見て、富士山の風景だけでなく神社等他の風景や食事・休憩も含めて、自分で取捨選択をすることのサポートをするベージなんかもあると良いと自分は思います。まぁ、モデルルートの提示も良いとは思いますが、個人旅行は自分での組み立てが醍醐味ではないでしょうか(ドライブ好きにはそういう人も多いとか)。また、個別の観光施設が各ページにあると、ちょっとどう巡るかを組み立てにくいですよね。富士山ぐらいの観光地であれば、それが出来ると思います。また、季節感があると最高ですよね。何なら高低差で山からみた景色もそこに富士山感があると、わりと面白いかもしれません。例えば、富士五湖を富士山から撮ったり、茶畑や新幹線が撮れたりしないだろうかということです。更にはフジヤマミュージアム(富士急ハイランド)は近現代の著名画家が描いた富士の絵画の数々を展示する美術館のようですが、写真とのコラボとかないんだろうかと思いますし、遊園地というより、自分で写真を撮りに行くのとセットで楽しめないんだろうかと思います。

他の切り口としては、富士登山(富士登山の魅力 やまなし観光推進機構)とか、富士五湖地域だったらテーマパーク観光とか(富士河口湖町の遊園地 ベスト5 トリップアドバイザー)もかなりの力があるでしょうし、世界遺産ということで、信仰・宗教面という切り口ももっとあっていいのかもしれません(富士山が世界遺産に選ばれたわけ 〜 信仰と芸術と構成資産 〜 世界遺産富士山とことんガイド)。これらを併せて強い富士山観光が形づくられているんだろうと思いますが、狙いが違うんで、一端分解して集合体として見ても良いと思いました。そしてこうした訴求力がある富士山観光に例えば山梨県や静岡県がそれぞれ地元物産を生かした食や宿泊・土産物を提供できると面白いみたいな(まぁ富士山の魅力を越えて有名レストランや有名ホテルや免税店のようにそれ自体が目的とは中々いかないかもしれませんが)。医療ツーリズムやジオツーリズムなんかも考えられるかもしれませんが、それはまた別にやることとします。

どうも現状ではこういったことが分かっているようで分かってない感じもあって、筆者はこうした考えをベースに本日は幾つか観光関連の記事を書くつもりです。

「来訪神:仮面・仮装の神々」(ユネスコ無形文化遺産登録)④(宮城)

2018-12-29 06:58:50 | 日本地理観光
写真の出典は下記文化庁報道発表より

米川の水かぶりは、宮城県登米市に伝承され、二月初午に行われる行事である。当地では、この日、藁簑わらみのや被かぶり物を付けた奇怪な姿の者たちが火伏せを願って沿道の家々に水を掛けながら、社寺等を参詣する(報道発表「「来訪神:仮面・仮装の神々」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた再提案の決定」より 文化庁)。

初午(はつうま)(日本の行事・暦)

初午行事は本来は、農作業が始まる旧暦の2月に行われていたようです。711年(和銅4年・奈良時代)のこの日に、稲荷社の本社である京都の伏見稲荷大社に稲荷大神が鎮座されたといわれており、稲荷信仰に関係する行事でしょう。ただし米川の水かぶりは火防を願う行事で参詣する社寺は秋葉大権現のようです。

興味深いことに稲荷信仰と秋葉神社には何らかの関連性があり、米川の水かぶりもその一形態と言えそうです。

オタクの聖地・秋葉原にお稲荷様が多い謎を紐解く。そこから見える歴史とは?(mizica)※(秋葉神社がある)秋葉原には稲荷神社が多いとか。
秋葉神社・三座稲荷(神社巡りジャパン)※埼玉県飯能市稲荷町
秋葉稲荷神社(神社人)※所在地:大分県別府市秋葉町1

東日本系で江戸時代に深い関係があるような気がしますが、別府市の一部は幕府領で、火男火売神社が存在しているのが注目されます。

お稲荷さんは元々五穀豊穣を願う農耕神のようですが、商売繁盛の神に変わっていったようです(お稲荷さんはどうして「五穀豊穣」から「商売繁盛」の神様に変わったのか 和じかん.com)。江戸時代は石高制でしたから、米=金でそのあたりが転機だったのかもしれません。

火伏せの神は火防の神ですが、江戸は度々大火に見舞われたことで知られます。火防の願いが強くなることも当然でしょう。元々は焼畑に関係ある山の信仰という指摘もあるようです。

いずれにせよ、どうもこの二つの結びつきは都市・町の信仰を示すと思います。

登米街道:築館~登米(宮城県の町並みと歴史建築)

秋葉原は江戸で、埼玉県飯能市は秩父街道、大分県別府は温泉場ですね(別府温泉のなぞと歴史 別府市 >江戸時代・元禄7年には、医学者貝原益軒が残した「豊国紀行」にも温泉場の賑わいが記述されています)。

旧暦で農作業の開始に関わる初午行事だということですが、稲荷神が五穀豊穣の神から商売繁盛の変わっていくに従って、火伏せの神と結びつき、原義が忘れられ、新暦に移行したとも考えられます。

平成30年「米川の水かぶり」(登米市)

>宮城県登米市東和町米川の五日町地区に古くから伝わる火伏行事で、毎年2月の初午に行われます。地区の男だけが水かぶりの姿になり行事に参加できます。
>男たちは、裸体の腰と肩に藁で作った「しめなわ」を巻き、「あたま」と「わっか」を頭から被り、足に草鞋を履き、顔に火の神様の印である竈の煤を塗ります。この水かぶり装束を身に着け、男たちは神様の使いに化身します。
水かぶりの一団は大慈寺の秋葉山大権現と諏訪森大慈寺跡に祈願した後、奇声を上げながら町に繰り出し家々の前に用意された水を屋根にかけ、町中の火伏せをします。人々は男達が身に付けた「しめなわ」の藁を抜き取り、自家の火伏せのお守りにします。

注連縄(しめなわ)は神の依り代。水かぶりは神の化身で来訪神行事だということだと思いますが、何故水かぶりというかは良く分かりません。水をかける行事のようにも見えますが、神道の水行と何らかの関係があるのでしょうか。

米川の水かぶり(米川里山だより)を参照すると、八幡神社、若草神社(江戸時代には稲荷大明神宮と称した)にも関係があるそうですが、これ以上の調査は止めておきます。さすがに宮城県登米市東和町のサイトだけあって、詳しいものがあると思います。

火伏せ行事ですが、山伏(やまぶし)との関連が見て取れると思います。伏せとは屈服させるのような意味もあって、折伏(しゃくぶく、しゃくふく)という言葉にも使われていますね。町を破滅させる火事を屈服させる願いをこめた行事が火伏せ行事ではないでしょうか。山伏(山伏とは? スピリチュアルコネクト)ですが、庶民は山を異界として恐れていたようですから、やはり山という異界を屈服させるために山伏は修行しているのではないかと思えます。怨霊を神として祀る御霊信仰もこうした考え方に通じるものがあると思います。恐ろしいものを祀るのはある種屈服させコントロールしたいからなのでしょう。