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教育に関する憲法改正の考察

2018-02-23 21:51:15 | 政策関連メモ
維新、自民の改憲案「教育無償化は努力義務」に反発も(産経ニュース 2018.2.21 07:57)

>日本維新の会は、教育無償化を憲法改正の大きな柱に位置付けるだけに、自民党の改憲案が無償化を「努力義務規定」にとどめたものとなれば、反発しそうだ。

教育無償化は今回の憲法改正では見送るべきだと思います。理由は最初の憲法改正は極力多くの国民が賛成するような内容にするべきだからです。そもそも日本国憲法は改正のハードルが高い硬性憲法ですので、賛否両論分かれるテーマというのは難しいと思いますが、特に今回は最初の改正ですので、多くの国民が憲法改正良かったねという内容にする必要があると思います。教育無償化に必ずしも反対ではありませんが、どうしても財源問題があるので、無償化は結局揉める話ではないかと思います。国民的議論が深まれば深まるほど揉めるはずです。幼児教育は応能負担で既に補助はありますから、無償化は幼児教育の支援とは受け取られず、子育て世代への所得移転と受け取られ、政治的には反対票が多くなるはずです。多分子供手当てみたいな扱いになるんじゃないでしょうか?幼児教育の無償化は賛成ではあるんですが、現実的に考えると、硬性憲法下での最初の憲法改正のテーマとしては相応しくないんじゃないかと思います。高等教育の無償化は元々自分は否定的ですが、少子高齢化社会・大学全入時代において無駄遣いと受け取られる恐れがあります。9条改正の議論が進むにつれ、現実的な必要性の高い改正が重要だと考えるようになりましたが、憲法改正は一歩一歩進めるべきテーマなんだろうと思います。多分教育の無償化はフルスペックの軍隊(自衛隊)を憲法に書き込むような議論ではないかと思います。高い目標は目標として維新が暖めておくのが適切ではないでしょうか?自民党が挙げた憲法改正4テーマの内、教育がもっとも国民的議論を呼ぶテーマだと思います。そういう意味で維新が教育を重視するのは、意義深いことです。教育に関して憲法改正が必要ないということはないというか、大いに意味はあると考えます。

自民改憲本部 教育条文案、大筋了承 環境整備に努力義務(毎日新聞 2018年2月21日 11時30分)

>条文案では、26条第3項に、国に「教育環境の整備に努めなければならない」などと規定した。

自民党案はそつがないというか反対はないと思いますが、何故この改正がなされないとならないかという指摘は当然有り得るだろうと思います。維新に譲歩を促す意味でも、より改正の意義が感じられるようにしたいところです。そこで考えました。「教育の重要性に鑑み生涯を通じた」教育環境の整備に努めなければならないとしてはどうでしょうか?生涯を通じたという文言を入れることによって、これまでなおざりにされてきた幼児教育(特に0~2歳教育・待機児童問題)や大学教育・生涯教育に焦点を当て国民的議論を促し加速させるのが狙いです。教育の重要性は直感的に分かり易いですが、単に勉強ができる云々だけではなく、数字に出難い様々な意味を持つと思います。憲法に教育の重要性をあえて書き込むことによって、教育の意義に関する国民の認識を深めるのも狙いです。日本国憲法26条1項は教育を受ける権利を規定し、2項は普通教育の無償化、義務教育の無償を定めています。国民に教育を受ける権利はあっても教育機関が無ければ教育は受けられません。つまり教育の供給サイドに着目することも大事な訳ですが、義務化してしまうと建前上例外が認められなくなります。さすがに大学教育や卒業後の生涯教育を義務化する訳にはいきません。日本は学力上位の国(例えば国際学力テストPISAの高得点に着目して「日本の15歳は何故学力が高いのか?」(早川書房)という本が出ています。この本はエコノミスト誌年間ベストブックに選ばれた本の邦訳です)で教育熱心な親や先生がそれを支えたと思いますが、待機児童問題は放置されましたし、大学教育は質の問題・国際競争力の無さを指摘され、生涯学習は進んでいません。アクティブラーニングでも小中学校は注目されてきたようですが、受験勉強の影響か高校では十分でないとも言います。この原因はいろいろあるでしょうが、ひとつには決まった枠組みで努力できる国民性があるかもしれません。普通教育(初等教育・中等教育)は義務であり、学習指導要領に基づく教育課程ですが、それ以外が野放しになってきたからこそ、問題が山積みなのかもしれません。それ以外を義務にできないにはしろ、努力規定を設けることによって、改善を促していきます。将来的には高校(やそれに準ずる教育機関)や幼児教育の義務化も視野に入るかもしれません。そう考えると努力規定でも憲法に書き込む意義は十分です。更にその意図を明確化するには、義務化されている普通教育以外に焦点を当てる文言が必要ではないかと思った次第です。これで学力十分だからあえて改正が必要ないのでは?という反対論を回避し易くなります。これまで憲法改正が一度も起こらなかったように現状日本人はそれほど新しい枠組みを考えるのが得意でない方かもしれませんが、枠組み・指針さえあればメキメキ伸びるのではないかと思います。重要性をあえて強調するのは、罰則規定のない努力規定・プログラム規定の空文化に歯止めをかけるためです。それほど重要だと考えられないものが義務である必要性はありませんが、広く重要だと認識されるものは半義務化されることが望ましいでしょう。罰則規定のない理念ではありますが、理念も憲法に書かれていると中々反対しにくいものです(現実的に考えて有り得ないような規定も憲法に書かれていると変えるのは中々難しいものがあります)。義務化すると例外は基本認められませんが、努力規定は個別の判断が必要になります。重要性に鑑みの文言が入ることによって、重要なもの→やる、そほれど重要でないもの→やらないということが明確になるのではないかとも思います。

>現行89条は「公の支配に属しない」教育への公金の支出を禁止しているが、この部分を「公の監督が及ばない」などと変更した。

私学助成の追認になります。本来は憲法を改正してから、私学助成をするべきでしたが、改正しないまま放置するより、改正した方がいいと思います。大阪市の塾代助成事業なんかも厳密に考えれば、違憲の恐れがあります。通塾は学力に影響をやはり与えるようです(4.学校外の学習機会の利用と学力 第3回学習基本調査 小学生版(CRN)。個人的な体験でもこれは頷けます。家で勉強しないタイプの子供にとっては明らかに学習量の増加に繋がるでしょうし、要領が良い子は分かりませんが、そうでなければ学習の質の向上にも繋がると考えられます。問題は経済的観点で、格差の是正を目指す自治体に補助を出すという選択肢があってもいいのではないかと思います。こうした取り組みに対して裁判に訴える人もあまりいないとは思いますが、なし崩しが常態化するのも良くありません。政府の憲法解釈の変更を違憲だと主張して憲法改正に反対する方々もいらっしゃいますよね。万が一ということもありますので、用心するに越したことはありません。

>一方、「経済的理由によって教育上差別されない」との文言を加えた26条第1項には「そもそも必要なのか」と異論が出た。「この文言も第3項に移すべきだ」などの意見もあり、執行部は修正を約束。修正内容について一任を取り付けた。

維新には申し訳ありませんが、経済的理由によって教育上差別されないためには、差別禁止と無償化はセットになるでしょうし、上記の観点もあって、差別禁止を規定するのは難しいのではないかと思います。

面白いのは教育の都道府県格差です。大阪を含め関西は結構教育に強いようです。そういう文脈から維新の教育に関する憲法改正案は出てきたのかもしれません。以下記事を参照。

都道府県間の東大・京大進学率、深刻な格差と意外な調査結果 青森は奈良の40分の1(Business Journal)

>トップになったのは奈良、次いで京都と、日本を代表する古都コンビが最難関大学への進学率でワンツーを占め、開成高校、灘高校という進学校の双璧を擁する東京、兵庫を上回った。上位の顔ぶれを見ると7位の神奈川、10位の愛知あたりは順当といえるだろうが、5位の大阪、8位の広島は意外な印象を持つ方も多いかもしれない。特に大阪は全国学力テストでも下位の常連で、学力不振エリアとのイメージは根強い。ただ両府県ともに「早い時期から行政の肝いりで公立校のテコ入れを行い、最近はその成果が現れている」(私立高講師)という事情があるようだ。

>地域として健闘しているといえそうなのが、北陸地方だろう。8位に入った石川、11位の富山、17位の福井と上位に入っている。いずれも県内在住の高校生の数は4万人に満たず、上位の都府県のように毎年大量の東大・京大合格者を出す私立有名進学校も存在していない。

塾がいいのか学校教育がいいのか分かりませんが、公立学校もまだまだやれるところはあるのかもしれません。日比谷高校の復活もありましたね。時間外労働の問題はあると思いますが、その辺はまたの機会に考察します。


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