観測にまつわる問題

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「原子炉時限爆弾」批判(第一章 浜岡原発を揺るがす東海大地震 2)(海溝型と直下型の混同)

2011-06-14 23:16:25 | 日記
間があいてしまったが、「原子炉時限爆弾」批判の続き。

脱原発派の中でも本が売れているということで始めた批判であるが、何ならもっと別の人を批判してもいいという気になってきた。あまりに酷いのだ。別に戦い易いから戦っているわけではなく、書いた当時は一番手強いはずだったのだ。とりあえず、何が酷いかと言うと、海溝型地震と直下型地震を混同している

地震についての解説を見れば分るが、地震には大きく分けて海溝型と直下型がある(詳細が気になる人は自分で調べること。専門家の解説が一番と思うので)。ところが、「原子炉時限爆弾」では意図的にか海溝型地震と直下型地震を混同している。浜岡原発に関してプレート云々を専門家であるかのように解説しているが、それは海溝型地震なのであって、広瀬氏が問題にしている活断層・直下型とは分けて解説しなければならない。メカニズムが違う(と地震専門家が断言している)のだから。

このことを頭に入れて36p以降を読むと唖然とすること請け合い。プレートの図と解説で恐怖を煽っておいて(海溝型地震の話だ)、何故か活断層がどうした直下型がどうしたなどと話を一緒くたにしているのだ。

海溝型の話をするなら海溝型の話、直下型の話をするなら直下型の話をしろということである。

浜岡原発が問題になるのは、太平洋岸で繰り返されてきた海溝型地震(津波)が想定されるからだろう。だったら、論理的に考えて、太平洋岸の海溝型地震を警戒するなら、静岡に限らず太平洋岸は警戒しておくべきという結論になるはずなのだが、原発に警鐘を鳴らす(そんな生易しい煽り方ではないが)のが目的なのか、そういうことに言及したりはしないらしい。海溝型地震はエネルギーは巨大だが、距離の関係で、震度自体はエネルギーが小さい直下型の方が大きくなることがある。今回の東日本大震災でも震度自体はそうでもなかったとされている。だから、海溝型地震で特に気をつけるべきは津波なのだ。エネルギーの巨大さを持って、何かとんでもないことが起こったかのように言い立てるのは、責任逃れを目論んでいる(ように見える)東電サイドと同じ論法に見える。既に当ブログでも批判したが、エネルギーが巨大かどうかなんて免責には全然関係ない。実際の地震の揺れあるいは地震によって生じた津波が原因で問題が生じたかどうかなのだ。分りにくければ、極端な例で考えれば分りやすいのだが、観測史上最大とされる1960年チリ大地震で津波は三陸地方を襲った(142名死亡)が、これで仮に原発がやられたとして免責するべきだろうか?そんなはずはないと誰でも思うだろうが、地震の大きさで免責!などと言っている人はこれと同じことを言っているのである。

浜岡原発の話に戻ると、海溝型地震は巨大でも揺れは距離的に和らぐわけだから、大きさだけを煽る(エネルギーが何十倍!の類)のは、津波問題以外にはあまり関係がないと考えて良く(勿論巨大な地震の揺れを軽視しているのではなく、地震の大きさが地上の実際の揺れに比例しないと指摘しているのである)、津波対策が万全なら(中部電力は少なくともそのように主張している)、海溝型地震のエネルギーの大きさの問題で恐怖を煽るのは、デマだと言い切っていいと思う。勿論、普通の大地震に耐えられないなら、それまでだが。

直下型と活断層の話も真面目に検討するなら、それはそれでドンドンやればいいと思う。自分は原発に賛成だが、安全対策を軽視するつもりはなく、そのためのコスト増は止むを得ない(それでも再生可能エネルギーよりは遙かに安い気がするが)と考える。ただ、この人は、このことに関しても、真面目に勉強しているとは思えない。

中央構造線がどうしたなどと煽っているからだ。地震学者の本を読んでも中央構造線が危険!なんてことは書いてない。そんな話はないからだろう。寧ろウィキペディア「中央構造線」(2011-06-15 0:20)だが、歴史時代に入っての活動歴は少ないらしい。あくまで特に問題とされているのは活断層(専門的には色々あるらしい)なのである。不活発な断層を大げさに取り上げてもしょうがない。まぁ、地震学者の先生に言わせれば、日本の何処でも地震は起きる(オホーツク海沿岸はそれでも起きそうにないらしいが)ということで、原発は地震が起きても大丈夫でなければならないというのは間違いない。

ところで、具体的に冗談みたいな間違いがあるので、ひとつ引用してみようと思う。

>この駿河湾地震の一七八倍から一〇〇〇倍の地震の揺れの地震が、これから間違いなく起こると予想されているのである。(59p)

大間違いである。マグニチュードが幾ら大きくても揺れは距離で減殺される。やはり海溝型地震と直下型地震を混同しているのだろう。海溝型地震(想定される東海地震)より直下型地震(駿河湾地震)の方が同じエネルギーなら揺れるということだ。海溝型の方がエネルギーは大きくても、それに比例して揺れたりはしないと言ってもいい。実際問題、東日本大震災は巨大なエネルギー(史上4番目)だったが、地震そのものでの被害はどうだっただろう?

間違い探しをするとキリがない。本当は地震に関する良書を読んだ方が勉強になるとも思う。自分は、「日本人が知りたい巨大地震の疑問50」島村英紀(ソフトバンク新書)が面白いと思ったのだが・・・。この本は東日本大震災を受けて書かれた地震学者の本で、スタンスとしては脱原発に近いかもしれず(地震学者は通常揺れて危険なものは心情的には支持しないのではないかと思う)自分とはその点全然違う気がするが(だから名前を出さない方がいいかとは思ったが、必要と思ったので、スタンスの違いを明記して出すことにした)、自分は面白く読んでいる(まだ半分程度だが)。少なくとも脱原発煽り作家とは、当たり前だが、地震に関する話のレベルが全然違うのである。

最後に今回の記事の内容を簡単に纏めると、地質学(中央構造線など)を出して(地震学者の解説と全然違う)、エネルギーの大きな(その割には震度が小さい)海溝型地震を都合よく強調して、大げさに恐怖を煽ってるだけだよな、以上。(これで60pあたりまで・・・。終わるのか・・・?)


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