「高等部は高校か?」改め・
その言葉で「迎合させない」ために(その3)
東田さんは、『自閉症の僕の七転び八起き』という本の中で、「自分を不幸だと考えていた」と書いている。
普通学級で「自分だけがみんなと違う」「どうして僕だけ」「なぜ僕だけ」と「苦悩するばかり」で、「僕が一生かかってもできないことを、みんなが軽々とやっている姿を見るたび泣きたくなり」、6年のとき「心身共に疲れ果て、逃げるように特別支援学校に転校したのです。」
これらの言葉は、就学相談の場でよく聞きます。
だから、「普通学級では自己肯定感」が育たないのだと、親を説得しようとします。
当事者もこう言っている。普通学級でボロボロになる子がかわいそうだと。
でも、そういう人たちは、東田さんの「その後」の言葉に耳を傾けようとはしません。
大人になった東田さんは、こう書いています。
「本来の自分を取り戻すまで四年かかりました。」
6年生で養護学校に転校して4年。
中学3年生の時、「本来の自分を取り戻した」東田さんは、「養護学校の高等部」ではなく「高校」を選択します。
『その理由は、僕の心に、大きな変化が起きたせいです。
僕は、自分の人生を人に選択してもらっているのではないか、と考えるようになったのです。
僕が自閉症であることと、自分の人生をどう生きるのかということは、別の問題ではないのか。本当にやりたいことは何だろうと自問自答するようになりました。
僕は、誰のために特別支援学校の高等部や作業所に行こうとしているのか、それが本当に自分のためなら、なぜ嬉しく感じないのだろう。特別支援学校では、多くのことを学びました。自閉症者としての自分を取り戻せたのは、この学校のおかげです。
しかし、ここで一体、何をしているのだろうと思う自分がいたのも確かなのです。』
(『自閉症の僕の七転び八起き』東田直樹)
◆
この国で、「高校」とは「何」だろう?
この国は、高校を「15歳の選別所」としか見ていない。
天才と障害者は「行かなくていい所」。
障害者は全員入学だが、「点数」が取れないふつうの子は「定員内不合格」にする所。
虐待する親が、進学させない「学ばせない」ことを、「虐待」でないと言い張れる所。
なぜなら、高校は義務教育じゃないから。
そう言われて、親も中卒だったり、高校を中退させられたりしていることも多い。
私たちはいつまで、1%の子どもを棄てるための腐った入試制度を続けるのだろう。
「龍と苺」 柳本光晴 少年サンデー
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