《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その6)
《高校入試は廃止できる》
寺脇研さんは、広島県教育長時代に希望者全入を実現させました。
「できる」人がいるという証明です。
でも、今はまた「定員内不合格」が復活、全国1位の座を守っています。
「したくない」という人がいるという証明です。
どちらにしても、「大人」の思惑一つで、15歳の子どもの1%がおもちゃにさせられている状態が今も続ているということです。
「義務化は難しい」とか「義務化はできない」という前に、「そうしなければならない」のです。
41年前に「養護学校義務化」はできました。
そして、「養護学校」の時代に、「高等部の希望者全入」は、難しいことも何ともなく、「実現」しているのですから。
あと1%の子どもの「教育の機会」を保障することは、難しい事でも、あり得ないことでもありません。
高校は無償化、今は私立高校の授業料も支給されているのですから。
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【高校入試は廃止できる】
(『なぜ学校に行かせるの?』寺脇研 1997年 日本経済新聞社)
「学校を楽しい学びの場にしよう、というと、そんなきれいごとは言っていられない、高校入試がたいへんだから受験勉強に走らざるを得ない、と反論されます。そうでしょうか。
ほんとうに高校入試はそんなに大きな悩みごとなのでしょうか。生徒全員が高校受験に悩まなければいけないというのは、不思議なことです。今のままでは、無理に悩ませているとしか思えません。
94年度の広島県教育委員会の調査によると、広島県の中学生の高校進学希望者は、中学三年時点では99.5%。現実に進学するのは96%です。私が広島県の教育長時代、高校入学定員を決める際に、それまで96%に合わせて入学定員を決めていたのを変え、99.5%分の定員に増やしました。これによって、どこかの高校には、必ず入れるようにしたのです。特定の学校に固執しなければ、希望者を必ず進学させることはできるのです。
入試に失敗したら高校に行けないかもしれない、と思いながら受験勉強をしている中学生は、
広島には一人もいません。
さらに高校改革を進めて、すべての学校がどんな生徒にとっても楽しい学びの場であるようにできたら、特定の学校をめざす必要もなくなり、どの学校も志願倍率1.0倍という状況を作ることができます。そうしたら、高校入試は全廃できるのです。
なぜ試験をするかといえば、百人しか入れないところに二百人くるからです。百人しか入れないところに百人来るなら、みんな入学させればいいのです。これまでの高校入試は、試験のための試験になっていたのではないか、という反省が教育関係者には必要です。
■
この本を書いた時点での、寺脇さんの肩書は、「文部省生涯学習局学習振興課長」です。年齢は45歳でした。しかし、その後、広島では「定員内不合格」を復活させ、今では日本一「定員内不合格」が多い県に「返り咲き」ました。
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