ワニなつノート

《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その7)



《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その7)

    


仲村さんから電話をもらう。不合格。


3月11日。よりによって、この日に。


80人も「定員」があり余っていて、伊織くんの生きる「寄る辺」を奪う。

地震も、津波も、原発事故もないのに、一人だけ、学校という「寄る辺」、友だちという寄る辺を、根こそぎ奪う。


一年前、仲村さんと一緒に沖縄県教委に行き、不合格の理由を聞いた。

「コミュニケーションができない」
「意思の疎通ができなかった」
県教委の人が、はっきりとそう言うのを、この耳で聞いた。

「校長に確認した理由ですか?」と尋ねると、「校長に聞いた理由」だと明言した。

今年も、同じ校長が、同じように入学を拒否した。

あの校長には、何を言っても伝わらないのだと改めて思う。
なぜなら、校長は、やまゆり園の犯人と同じ人間観で人を評価しているのだから。

「コミュニケーションができない」「意思の疎通ができなかった」そういう「基準」で人間をみること。

そういう「評価」で子どもを排除すること。

校長とやまゆり園の犯人は、同じ価値観で人を評価している。



     ■       ■      ■


《2008年の抗議文》

今年、さきちゃんもすでに2回の「定員内不合格」によって、入学を拒否された。他にも書いたが、12年前ことを書いておきたい。

2008年。定時制の追加募集16名に対し、受検生は一人。それでも、「定員内不合格」にされた。
その後の校長の差別的な態度も含め、「入学者選抜に係る抗議及び申し入れ書」を書いた。
一部抜粋で紹介します。


           ◇


『 ・・・不合格の理由を校長に尋ねたところ、次のような答が返ってきました。
「高校の教育を受けるに足る能力・適性を見て私の判断で決定した。高校は義務教育ではない。高校教育を受けるに足る能力が当然求められる。一定の能力がないときびしい。」


しかし、高等学校学習指導要領には、「学習の遅れがちな生徒,障害のある生徒などについては,各教科・科目等の選択,その内容の取扱いなどについて必要な配慮を行い,生徒の実態に応じ,指導内容や指導方法を工夫すること」とあります。


長生高校では、2005年にも当会から一人が受験し、合格しています。当時の長生高校の福島校長は、特色化選抜と学力選抜で不合格になり、2次募集の試験の前に見学に訪れた親子に、次のように説明しました。
「どうぞおかけ下さい。大変な努力をされましたね。…定員が割れている場合、点数だけでは合否を決めないですよ。Bさんが今まで生きてきたことと、努力してきた心を、我々は見ていくのです。」


・・・今年は当会から8人が受検に臨み、7人が合格しています。また、この3月で56人が高校を卒業しました。昨年までに、77人が千葉県の公立高校に入学しているのです。


今回の入試選抜の内容は、作文と面接です。これだけで、「高校教育を受けるに足る能力・適性がない」と判断するのは、遠藤校長の障害児に対する差別と偏見の現れでしかありません。


私たちは、Aさんがなぜ不合格にされたのか納得できず、遠藤校長に理由を聞き、子どもにも声をかけてほしいと話しました。


・・・ところが、長生高校の遠藤校長が、本人を前にして言った言葉は、「本人に理解できますか?」という一言からはじまりました。前回までは、たとえ不合格という結果でも、自分に対し、話をする先生に対し、まっすぐに顔をあげ、答えていたAさんでしたが、今回は顔を上げようとはしませんでした。


こうした対応は、遠藤校長が、受験した子どものことを全く理解できておらず、障害に対する「偏見」を入試前も入試後も、変わらずに持っているということに他なりません。


この程度の理解も持てずに、「高校の教育を受けるに足る能力・適性がない」という判断を下したことは、明らかに、偏見と差別に基づくものです。高校入学にあたっては選抜制度があり、入学許可の決定権は校長にあることになっています。しかし、校長個人の差別意識や障害者への偏見によって、子どもの教育を受ける権利が奪われていいはずがありません。


県立高校が県民に後期中等教育を行うところであるならば、県立高校が、生徒に人権について教え、差別について考えさせるところであるならば、県立高校が、真に教育を行う場所であるのなら、教育を必要とする子どもを受け入れるべきです。


今年度、4回、5日間に渡る受験に臨み、高校生になりたいという意欲と希望を訴え、がんばってきたAさんが、被った今回の差別的な判定と、長生高校遠藤校長の差別発言に対し、私たちは総身の怒りと悲しみを持って抗議するとともに、Aさんの被った不利益を回復する手立てを要求いたします。


        記


1. 長生高校遠藤校長の、16名募集でただ一人受検に望んだ生徒を不合格とした判断は誤りであり、その判定の取消を求めます。


2. 長生高校定時制において16名分の教育を行なうという県民との約束に対し、ただ一人の教育を行なうこともしない姿勢は、公立高校としてあまりに不誠実であり、また障害への無理解偏見による判断を下に下した不利益を回復するため、再度の追加募集の実施を求めます。


3. 長生高校遠藤校長の差別発言に対する処分及び本人への謝罪を求めます。


以上


(つづく)
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